Eventsセミナー・シンポジウム

山下一仁氏(キャノングローバル戦略研究所研究主幹)講演会

「TPPと日本の農業」
(グローバル公共政策の倫理とイノベーション論Ⅱ)

 2015年12月8日、「グローバル公共政策の倫理とイノベーション論Ⅱ」の授業において、キヤノングローバル戦略研究所の研究主管・山下一仁氏(農学博士)による、「TPPと日本の農業」と題する講演が開催されました。本講演では、(1) TPP交渉の概要とその結果が日本の産業に及ぼす影響、(2)日本の農業の実態とコメ農政の抜本的改革案、について解説がなされました。

 山下氏はTPPについて、「参加国は増加し、将来的には中国をも取り込む高レベルの制度である」と評価する一方で、「コメなどの農産物5項目を関税撤廃の例外とした代償として、撤廃まで25年間要するアメリカによる対日自動車関税2.5%を受け入れることになったことが本当に国益になるのか」と日本の交渉方針を厳しく批判しました。

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 また、現在日本で行われている消費者負担型農政(消費者且つ納税者である国民の負担によって、減反と高い米価を実現する農業政策)の非効率さを批判し、「主業農家に対する直接支払いによって、農業の構造改革を行うべきである」と訴えかけました。講演の後半には、海外における日本米に対する評価の高さを示した上で、「日本政府は減反を廃止して、土地面積の単位あたり収量を増加させ、さらに海外で評判のよいコメを輸出することで農業を活性させるべきである。そうすることで、農地を利用してコメの生産を維持し、輸入食料に頼ることを減らして、食料安全保障を確保するべきだ」との考えも述べました。

 講演会場には他学部からも聴講者が集まり、日本が抱える農業問題の重要性について、刺激のある内容に惹きつけられた様子でした。

(OSIPP博士前期課程 芥川 晴香)

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