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日韓国際人権法シンポジウム 開催

日韓国際人権法シンポジウム ~東アジア連携に向けて

 2月10日と11日の2日間にわたって、日韓国際人権法シンポジウムがOSIPPにて開催されました。このシンポジウムは、韓国と日本という、多くの国際人権条約の加盟国であり、国連人権理事会のメンバー国の研究者と実務家が集い、国際社会における人権の保護・進展に向けて、現状を報告し、日韓の連携を模索するための機会として開催されました。

 1日目のセッションでは、「国際法と国内法」、「ヘイトスピーチと差別」、「先住民族、災害被災者の権利」、2日目のセッションでは、「難民と移民の権利」、「アジアと北アフリカの移行期正義」、をテーマに参加者が発表・討論を行いました。

 「国際法と国内法」をテーマとした第1セッションを紹介すると、このセッションでは、壇国大学のオ・スンジン教授と本研究科長である村上教授が発表を行いました。オ・スンジン教授は、軍政下の韓国では人権が侵害されていたが、民主化が本格化した90年代以降、国際的な人権規範が徐々に受け入れられるようになり、また、裁判のやり直しや補償金の支払いなどによって過去の人権侵害を是正しようとする動きがみられるようになった、と述べられました。そして、韓国では当時、反共産主義やナショナリズムの考え方が強く、これらが人権侵害の大きな要因となっていた背景に触れ、今後は人間の尊厳などを基盤とした国際的に受容された人権概念の理解が、韓国国内で一層進むことが重要であると主張されました。

 また、村上教授は、国際人権条約と日本の裁判について発表を行いました。村上教授は、日本国内の裁判で、人権条約機関(例えば自由権規約委員会など)の解釈に基づいた主張が容易に棄却されたり、人権条約の条項が誤って解釈されたりしている、として人権条約が軽視されている現状を指摘しました。これらの要因として村上教授は、人権条約に精通していない裁判官、人権条約の受容に対する最高裁判所の消極的態度を挙げ、今後はこうした課題を解決していかなければならないと主張しました。

(OSIPP博士前期課程 藤田美由紀)

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