松本充郎先生-追悼集-

りんごの思い出

 

「りんごの思い出」

北村周平(OSIPP講師)


 

 

 

同僚で研究室がお隣の松本先生とは、特に所有権など土地の問題に関して興味関心が重なる点があり、生前は色々とお話をさせていただきました。私がOSIPPに来て、はじめて松本先生とお話ししたのは、確か梅田のビアガーデンでOSIPPの新人歓迎会があったときです。入店待ちの長蛇の列に並びながら、土地所有権の話や環境法の話などをしました。私は法学については門外漢ですが、土地所有権という共通の話題に関して、経済学と法学の点から話ができてとても楽しく、そして嬉しかったのを覚えています。これから私の職場になるOSIPPの、学際的な雰囲気を垣間見た瞬間でもありました。

その後も廊下ですれ違えば、よく話をしました。お忙しい中だったとは思いますが、ちょうど『土地所有権の空洞化』を執筆・編集されている最中で、本の編集作業はどうですか、とすれ違いざまに尋ねると、立ち止まって台湾における土地所有権と先住民の問題など、新たに上がってきた原稿の内容をこっそり聞かせて下さいました。また、当時から話題になっていた空き家・空き地問題に関する本を紹介していただき、読み齧ったばかりの知識をもとにご意見を伺ったりもしました。こういった会話がきっかけで、所有権制度に関する研究コミュニティーもご紹介くださり、森林所有権制度研究会の定例会にご一緒させて頂いたこともあります。打ち上げでジビエを食べたのも良き思い出です。

松本先生は、知識の人だと思います。膨大な量の知識をお持ちで、私が素人意見を述べたときも拾い上げてくれ、知識で裏付けをとってくれるという経験を何度もしました。そして、否定をせず、良い点を拾い上げるというところにお人柄が出ていたと思います。廊下ですれ違ったときもいつもにこにこされていて、研究をするのが本当に楽しいという雰囲気も、話しながらいつも伝わってきました。

お体の調子を崩されてからも、大学に来られているときはお話をする機会がありました。十和田湖の環境保全事業に関わられている関係で、毎年青森からりんごが送られてくるらしく、そのおすそ分けを頂くことがありました。とても大きなりんごで、味も今までの人生で一番というぐらい美味しかった。このことを後で話すと、満面の笑顔で、それは良かった、と言われていたのを今でも覚えています。

研究室の鍵を締めて帰るとき、電気のついていないお隣の部屋を見ると寂しい気持ちになることがあります。松本先生、またいつかどこかで土地所有権のお話ができればなあと思っていますよ。

2017年3月9日 教員送別会での記念撮影(前から2列目、右から3番目が松本先生)