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私の一冊 湯川 拓 准教授

Hedley Bull , The Anarchical Society: A Study of Order in World Politics, Columbia Univ Press,2002(3版)

「国際政治学の一番根本的な問いはアナーキーな国際関係に秩序があるかどうか、そしてどのように保たれるかということ」と湯川先生が語る。本書はその問題に対し、「国家も社会を形成している」という視点から、説得的な議論を展開し、「秩序はある」との答えを出した。本書の特徴的な点はいくつかあるが、例えば、Bullは戦争も国際社会における秩序維持のための制度と見なしている。つまり、国際社会において最優先される価値は平和ではないと考え、戦争に秩序維持のための積極的な役割を見出しているわけです。これは他の国際社会論にはあまり見られない議論です。

 国際政治学における古典で代表的な一冊と湯川先生が強く本書を薦めた。学部2年生の時国際政治学の授業で本書を読み通し、博士課程に入ってからその面白さが段々分るようになった深みのある一冊である。しかしながら、その本に対して、「書いてあるすべてのことに賛成するわけではなし、論理展開もそれほど整理されているわけでもない」と湯川先生も自分の意見を率直に話した。具体的には、国際社会において追及される価値やそれを支えるための制度や規範は時代と共に変遷していくが、本書にはそのような動態的視点が薄い。したがって、国際社会の変化を捉えるような理論枠組みを作れないかと考えています。とは言え、準拠するにせよ批判するにせよ、湯川先生の思考の原点であり、定点となることが多いのはこの本である。

「学際的な勉強をしたり応用的な科目を履修できるのがOSIPPの良いところだが、まずは自分が専攻するディシプリンの基礎をしっかりと身につけるようにしてもらいたい」と湯川先生がOSIPP学生たちへメッセージを送った。