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【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(猪口絢子さん、鈴木星良さん)

【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(猪口絢子さん、鈴木星良さん)


今回は、OSIPP博士後期課程に所属する猪口絢子さん(D1)、鈴木星良さん(D3)にお話を聞きました。研究者を志した理由や経緯、ご自身の問題意識や現在の研究、そして研究者を目指す後輩たちへのメッセージを語ってくれました。

 

―まず、研究者を志した理由・経緯について教えてください

国連ジュネーブ支部にて

猪口さん:私は小さいころから、部落差別や民族差別など、自分とは異なるルーツを持つ人々への差別を身近に見てきました。学校で熱のこもった人権教育を受けたこともあり、「虐げられた人々の生活を何とかしたい」とぼんやりと考えていました。高校生の頃、現代社会の授業で『ホテル・ルワンダ』という映画を観たのがきっかけでアフリカに出会い、関心が世界に広がりました。「私が生まれた後にも、こんな内戦や虐殺があったのか」と衝撃を受けると同時に、内戦や虐殺の起こる「構造」への関心が生まれました。大学生になって勉強するうちに、「構造的暴力」を打開したい、そして全体的な

「構造」を見れる立場としての研究者になりたい、

そういう風に考えるようになりました。

国際シンポジウム・International Symposium on Culture, Arts and Literature (ISCAL)にて

鈴木さん:私はそもそも、現在までモダンバレエを25年間続けています。ただ、そのまま芸術だけの道に進むつもりはありませんでした。入学した大阪大学の法学部国際公共政策学科では、法学・経済学・政治学をバランスよく学ぶのですが、なぜか経済学が特に成績が良かったんです。経済学を学ぶゼミに入ったころ、経済と芸術の結びつきを研究する「文化経済学」という分野があるのを知りました。文化や芸術を経済学的に考える分野だったので、すぐにのめり込みました。また、海外では1960年代頃からある分野なのですが、日本では90年代くらいからしか研究が進んでおらず、「自分ができる研究の余地も大きいのではないか」と考え、大学院に進学しました。

 

―お二人の問題意識や、研究している分野について教えてください

学会報告の様子

猪口さん:私が現在関心を持っているのは、「規範はどのように国際社会に広がるか?」という問いです。例えば、こんな事例があります。対人地雷禁止条約は、国際NGOが「地雷は非人道的である」という規範を作り出し、それが次第に国際社会に伝播していったことで生まれました。このように、国際社会で共有されていたような既存の価値観が、新たな価値観に取って代わられることがあります。言い換えると、「人間は変われるし、価値観も変わることがある」ということですね。私は、そのように人々の価値観が変化する「臨界点」がどこにあるのかについて、政治家や官僚へのインタビュー等を通じて研究しています。修士論文では、「企業活動を通した人権規範の伝播」について、ルワンダを事例にして研究しました。

これまでの研究は政策決定者による交渉現場を分析してきたものが多かったのですが、私は「企業活動」に着目して研究を進めています。

 

国際学会・RW-332nd International Conference on Arts,Education and Social Science (ICAES) において

鈴木さん:私が関心のある舞台芸術という分野は、とにかく社会的・経済的基盤が脆弱なんですね。博物館や美術館が取り扱うような文化財には予算がつけられて、「コンテンポラリー」と呼ばれるような新しい芸術分野、特に舞台芸術には回される予算少ないんです。「利益が見込めない」と言われ、政府や地方自治体の予算が削減されたというニュースはよく聞きますよね。しかも、日本は海外と比べて、芸術への寄付金や予算がそもそも少ないんです。でも、私は、舞台芸術は社会にもっとアプローチできると考えています。例えば最近、障害者支援施設での芸術活動や、演劇で防災を教えるプロジェクトなどが進んでいます。私は、このような活動の「効果」を何らかの形で測定し、意義を明確化したい。体験を重視する舞台芸術は後世に残りにくいと言われますが、私の研究では、アンケート調査を定量的に分析することで「効果」を測定するのを目指しています。

 

―これまでの研究や、現在の研究活動について聞かせてください

学会報告(IPSA AISPで)

猪口さん:先ほど言ったような「企業活動を通した人権規範の拡大」について、ルワンダの事例をさらに深堀りしたり、他の業種や地域の事例を集めたりしている段階です。学会報告については、今年はすでに海外での報告を2回行いました。オーストラリアで行われた政治学(IPSA) の学会、そして世界国連学会(ACUNS)での報告です。今回参加した学会でコネクションは作ることができたので、次は近い関心のある研究者を誘ってセッションを開きたいと考えています。また、今後はどんどん論文を書いて投稿していきたいと思います。政治系だけでなく、国際人権法を扱う雑誌への投稿や、英語での執筆にも挑戦したいですね。

 

鈴木さん:私はこれまで4つの研究を行ってきました。そして、それぞれの研究についてはすでに学会報告や論文投稿を行いました。ただ、研究を行うためのデータがあまりにも不足しており、アンケートを自分で行わないといけないことに苦労しましたね。D2時にはユネスコへのインターンも経験しました。博士後期課程では、学会報告や論文投稿など、毎年何かしらの業績を作ることを意識しました。今年もまだ学会報告を控えています。11月中旬にはこれまでの研究をまとめる形で、博士論文の初稿を提出する予定です。

 

―研究職を目指す後輩へのメッセージをお願いします

猪口さん:現在の日本で研究者を目指すのは、色々な面で厳しい環境にあると思います。だからこそ、計画的に研究を進めていく必要があります。ただ、企業のように利益に縛られず、自由に考えられることは本当に楽しいですね。OSIPPの先生方やスタッフの方々の支援は手厚く、研究に打ち込める贅沢な時間を送らせてもらっていると思います。積極的な学生が多く、学生同士で議論ができるのも、日々の楽しみになっています。これからもいろいろな後輩にOSIPPで出会いたいですね。

 

UNESCOでのインターン時(UNESCOのオフィスにて)

鈴木さん:私が目標にしたことですが、やはり「毎年何かしらの業績」を作ることが重要です。また、学会等で人脈を作っていくことも大事です。博士修了後は、正直「先が見えない」というのが本音です。ただ、自分の研究を信じて続けていけば、いつかは評価されるだろうと信じています。「舞台芸術を計量分析する」という自分の視点だけは明確に持ち続けていきたいですね。また、切磋琢磨しあえる仲間を持つことは本当に大事だと思います。私も、研究室の同期がいたことで、一生懸命頑張ってこれたというのが大きいですね。

 

―本日はありがとうございました。

(OSIPP博士前期課程 韓 光勲)