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研究科長就任インタビュー:松野明久教授

研究科長就任インタビュー:松野明久教授


 

2018年4月からOSIPP研究科長に就任した松野明久先生にインタビューを行いました。松野先生は1956年に熊本県天草で生まれ、東京外国語大学(インドネシア語)を卒業し、同大学院を修了しました。1983年から大阪外国語大学で教鞭をとりながら、国連ボランティア(以下UNV)として国連東ティモール派遣団(UNAMET)地方選挙管理官を勤め、他にも東ティモール受容真実和解委員会(CAVR)上級歴史調査アドバイザー、JICA短期専門家としての勤務経験などがあります。2007年10月から大阪大学大学院国際公共政策研究科の教授として活躍し、東ティモールとインドネシアを主なフィールドとして、紛争史・紛争解決・平和構築を研究しています。

 

アルゼンチンのマルデプラタ大学法学部を訪問し、教授、検察官、弁護士、人権団体、被害者の会の方々と面談。軍事政権時代の人権侵害についての裁判の現状について聞いた(2017年9月)

大学教授を目指すきっかけは何だったのでしょうか:

小学校の教員だった父親のもとで育ちましたが、教育者になるつもりはさらさらなく、商社など海外で働ける企業に就職しようと考えていました。しかし大学4年生のときインドネシア(バリ)に留学先し、書籍だけでは分からなかったフィールドのおもしろさを感じ、もっと勉強したいとの思いから大学院進学を決めました。

 

どのような経緯で東ティモール研究に取り組むことになりましたか:

もともとインドネシア研究が中心でしたが、インドネシアがかかえる紛争地として東ティモールにも関心をもちました。東ティモールでの虐殺事件や1996年のラモス・ホルタ氏等のノーベル平和賞受賞などを通して東ティモールが国際社会から注目を浴びるようになるにつれて、忙しくなっていきました。スハルト政権が崩壊した1998年からの10年間は、マスコミ対応、国連での仕事、現地支援プロジェクトなどで、怒涛の日々が続きました。

 

東ティモール受容真実和解委員会で調査アドバイザーとして調査員たちにアドバイスを行った。(2003年-2004年)

東ティモール研究に関わる中で、印象的な出来事を教えてください:

1999年8月の住民投票の前後は、今も「昨日のこと」のように覚えています。当時はUNVとして現地に滞在しながら、幾度となく聞こえる銃声、頭の上を通過する銃弾を感じながら、逃げ惑う住民の姿を目の当たりにしてきました。青年を手当てしたものの、結局彼は命を落としてしまうという経験もありました。元々ポジティブシンキングな方ですが、自分には何もできないという無力感や、巨大な力を目の前にした際の一人の人間の非力さを実感しました。

そのような現場経験とは対照的だったのが、1990年代に何度か足を運んだジュネーブの国連人権委員会(当時)です。そこは各国政府代表などによる政治的な交渉の場であり、実際に人が死んでいく現実の世界と、外交空間の間に存在するギャップを感じました。両方の場に身を置くことができる研究者として、現場感覚を忘れずに、政策論的に世の中の仕組みにアプローチしていくことが基本姿勢となっていきました。

 

カンボジアのある村にて。子どもだったポルポト時代に家族を殺され、自身も強制労働で苦労した人の話を聞いた(2017年3月)

約40年間の研究者生活を振り返り、現在どのようなことをお考えですか:

私が携わってきた紛争研究や国際政治という学問分野においては、問題を構造的に捉えることが多いですが、紛争の解決に至る現場を見ると、その中を生きる人間が大きな力を持っていると感じます。指導者だけではなく、むしろ指導者層を突き動かす市民たちが現場には存在しており、そこから「紛争と人間」について考えるようになりました。

また私自身は、インドネシア研究から始まって東ティモール研究を行い、現在は他のアジア地域や中東、中南米でも調査を行っていますが、研究の関心や目標は変化していくものであり、学生にはそれを恐れて欲しくないと思います。しかし常に、自分の中で論理的にその変化を説明し、自分で自分を説明する力を持っていて欲しいと思います。

 

マレーシアとの国境に近いタイ南部の町、パタニーにあるクルセ・モスク。ムスリムであるマレー系住民が多いこの地域はテロ事件もおきる紛争地になっている。このモスクは2004年に軍の銃撃で多くの死者が出たところである。(2015年7月)

最後に、OSIPPの研究科長としての考えをお聞かせてください:

OSIPPは、大阪大学の中でも国際化を進める役割があると感じています。日本はこれからより世界を視野に入れた研究が求められ、また、世界の人々が集まる中に日本人が入っていく環境を国内外で構築する必要があるでしょう。実際に行動に移すと大変なことも多々ありますが、次の世代に必要なものを作り上げるためにも、教育環境を整備していきたいと考えています。現在OSIPPは留学生の比率が高く、英語の授業も増えてきました。国際化をさらに推進すると共に、世界基準で教育の中身を再検討していきたいと考えています。

 

 

 

 

(OSIPP博士後期課程 田中翔)

 

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