研究科行事

星野教授より祝賀メッセージ「OSIPP創立25周年にあたり」

 

 

星野俊也
国際連合日本政府代表部
大使・次席常駐代表
(OSIPP招へい教授)

 

ニューヨーク・マンハッタンのイーストリバーの河畔にある国連本部を臨む国連日本政府代表部の執務室から、OSIPP創立25周年を祝うメッセージを書いています。

うれしいことに、ここニューヨークの国連では、OSIPP出身の奥村さんがUNICEF本部でバリバリと活動していますし、博士課程を修了したSuka君は母国トンガの首都で外務省の要職をこなした後に国連トンガ政府代表部の次席常駐代表となって活躍しています。当代表部には今年の2月、法学部国際公共政策学科出身の八代さんが政務部の専門調査員に着任し、すでに重要な戦力となっています。また、ポルトガルからの留学生で博士課程を修了したRui君が、JICA研究所の研究員となって、先日、平和と開発の分野での国連活動について取材にやってきました。外務本省では、原さんが地球規模課題を担当する重要な課の首席事務官として、大切な省内及び国内の調整をしっかりと進めてくれています。

「OSIPP」でつながる仲間たち、そして、私も含め、もしOSIPPがなかったら、と問われたら、私たちはいまどこで何をしているのか、まったく想像がつきません。

OSIPPの四半世紀は、日本の内外から、ほかでもない、OSIPPの掲げる「国際公共政策」という研究分野への関心を共有し、学術と実務、あるいは理論と実践の両面から問題にアプローチをしてよりよい社会や未来を作る営みに知的リーダーシップを発揮したいと考える意欲的な者たちが、この待兼山の地に集まり、学生と教職員が一緒になって切磋琢磨してきた25年だったのだと思います。いまどき流行りの「課題解決型学習」や「能動的学修(アクティブ・ラーニング)」など、OSIPPではずっと以前から実践していたことでした。修了生たちは、実務で実力を発揮している者が多いですが、私の研究室の出身者も含め、研究者となり、学界で活躍する者が増えているところは、研究型大学院の面目躍如たるところでしょう。私は、松繁先生と村上先生の間の3年間、光栄にも研究科長を務めさせていただきましたが、ともに尽力をしてくださった執行部及び事務長以下の事務方各位には、心より御礼を申し上げます。

私の科長時代は、平野前総長の下での国際担当の総長補佐と併任になり、その後、副学長になった時期と重なります。研究科長職を終えたところで現在の西尾総長の下での国際担当の理事・副学長に任用されたので、この間、部局と本部と両方から大学の国際化について見つめなおす機会を与えられました。
科長在任中は、OSIPPでは、2つの基幹講座や協力講座、連携分野などを通じた研究教育を強化するとともに、これらの思い出深い事業を進めました。
– 光栄にも阪大法学部の大先輩で外務事務次官をも務められた薮中三十二先生を特任教授にお迎えしてスタートした稲盛財団寄附講座
– 「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム」を通じたオランダ・ライデン大学との学術交流
– 博士課程教育リーディングプログラムの枠組みを用いた「未来共生イノベーター博士課程プログラム」
– 大学の世界展開力強化事業に採択された「アジア平和=人間の安全保障大学連合」プログラムによる国内4・東南アジア6大学との教員及び学生の交流
– 韓国・キョンヒ大学との教員・学生交流
– OSIPPとキョンヒ、台湾の国立成功大学も加わった三者の学生交流、など

こうした交流で培ったつながりは、いまも続いています。

本部の国際化とOSIPPの国際化を同時に手掛けながら気づいたことは、OSIPPはOSIPPを足場に、OSIPPのペースで、OSIPPらしい活動をどんどんと前に進めるべき、ということでした。また、現在、国連外交実務の中心で政府の中に身を置いていると、多忙ななかにもいろいろと新しい経験や着想を得るのですが、それらをいまの身分、いまの組織のなかで事業化するにはあまりに制約が多く、再びOSIPPの教員という自由な立場に戻ったときこそ、これからの世界を展望した新しいプロジェクトが組めるのではないか、などと楽しみにしています。

大学を取り巻く環境は依然と厳しいですが、私たちの共通のホームグラウンドであるOSIPPを共に盛り立て、私たちの研究教育を通じて世界を変えていけたらと思っています。OSIPPの今後の発展を大いに期待しています。

(了)