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松浦晃一郎氏(ユネスコ前事務局長) オープン教室

「マルチラテラリズムの将来:ユネスコの将来」

松浦晃一郎氏 オープン教室


 2017年7月12日、大阪大学豊中キャンパスにて、「マルチラテラリズムの将来:ユネスコの将来」との演題のもと、国連教育科学部文化機関(ユネスコ)前事務局長の松浦晃一郎氏を講師としてお迎えし、オープン教室が開催されました。阪大の客員教授として毎年2回ご来学頂いております。

今回は、マルチラテラリズムの歴史的背景と現状、将来について、ユネスコの視点も交えてご講演されました。マルチラテラリズムの三本柱として国連システム、地域機構・地域間協力、国境を越えた協力(G20など)についての形成過程を述べられた後、昨今のマルチラテラリズムに逆行する動きへ言及されました。大きな事例としてトランプ政権を取り上げ、国連分担金の削減、NAFTAの事例を始めとする地域間協力に対する消極性、G20サミットにおけるパリ協定への反対や保護主義推進についてご説明されました。Brexitの事例なども踏まえ、国際的にマルチラテラリズムと逆行する単独主義やバイラテラルの動きが存在することをお話されました。

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その後、ユネスコが経験した二つの危機について、松浦氏がご対応された第一の危機、現在進行形で存在する第二の危機について語られました。第一の危機について、その原因と解決のための行動について述べられました。1984、85年のアメリカ、イギリスの脱退の原因について、人事や予算に関するユネスコのミス・マネジメント、東側寄りと見られてしまったユネスコの対応、言論の自由に反すると捉えられてしまった途上国マスメディアの能力向上に対する対応の3点を挙げられました。解決のために松浦氏ご自身が実行されたこととして、ユネスコの組織改革、米国を中心とした各国に対する理解を広げる活動についてお話されました。パレスチナの正式加盟に端を発するアメリカの分担金支払いの停止から始まった第二の危機は、活動自体にも消極的姿勢を見せる現政権に対して現状分析をされました。その上で、活動への理解と参加を促しながら、分担金支払いの交渉をする必要性について述べられました。

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学生の質問にも丁寧にご回答され、中長期的視野に基づいた政策の必要性、国連における日本のプレゼンス強化についてのお話、マルチラテラリズムを推進する中国の存在、2003年ガイドライン修正の必要性など、様々な論点について語られました。

(OSIPP博士前期課程 田中翔)