2018.10.15
【研究紹介 山田康博教授】
核兵器と国際関係の歴史を辿る
OSIPP政治系教員である山田康博教授にインタビューを行いました。山田先生は広島大学を卒業後、フルブライト奨学生としてオハイオ大学へ留学、大阪外国語大学にて教鞭をとられメリーランド大学客員研究員を経て、2007年から本学にて教鞭をとられています。専門は現代アメリカ対外関係史で、特に核兵器と冷戦史を研究テーマにしていらっしゃいます。2017年にはご自身の博士論文を基にした単著である『原爆投下をめぐるアメリカ政治-開発から使用までの内政・外交分析』を出版されています。
いま取り組んでおられる研究内容について:
山田先生が取り組んでおられる研究テーマは広く言うと核兵器と国際関係の歴史であり、具体的には1945年の原爆使用をめぐる問題、キューバミサイル危機などの国際危機と核兵器の問題を中心に研究をされています。現在は、昨年出された単著で欠けていた、1945年の対日原爆使用時にアメリカの同盟国であったイギリスの役割を研究されています。
なぜこの研究に取り組むことになりましたか:
先生は、もともと冷戦の中で核兵器がどのような役割を果たしたのかという点に興味をお持ちでした。当時、広島市内にキャンパスのあった広島大学への進学が研究をはじめるきっかけでした。広島大学にて山田浩先生のもとで国際政治学や歴史学を学ばれた後、オハイオ大学にて本格的に歴史研究を学ばれました。
この分野の魅力、面白さ、最新の研究動向について聞かせてください:
歴史研究の魅力は、過去に何があったかが分かることだそうです。特に、先生がテーマにしていらっしゃる現在に近い過去は現代に深く関わっており、現代の政策にも生きるテーマであります。先生の取り組んでおられるテーマは定説があるようでなく、自分で定説を覆す新たな説を作ることができるのが魅力だとおっしゃっていました。定説を覆すことでそれを元にしていた現在の安全保障政策も変わる可能性があり、これが政策研究にも生きるそうです。
先生の研究分野における近年の動向として、従来までの研究は大統領などの政治家レベルに焦点を当てたものが多かったが、現在では新たな史料の発見によって軍人などの実務家レベルに焦点を当てたものが多くなったそうです。さらに、アメリカ以外の国の史料も公開が進み、多国間の国際関係史としての研究が進んでいるそうです。例えばキューバ危機では近年、キューバやソ連の史料の公開が進み研究が進んでいるそうです。
大学院でこの分野を研究していくためには、どういった勉強をしておく必要がありますか:
先生は学部のうちに「英語の読める能力」と「冷戦史の全体像を把握しておくこと」が必要であるとしています。現在では、史料は特に膨大になってきているのでそういった能力が必要であるそうです。
最後に、先生の指導スタイルや指導学生の研究テーマを教えてください:
先生の指導スタイルは、良いものを大量に読ませるスタイルだそうです。書評レポートを課すことも特徴です。これは先生が留学していた際に受けていた指導を元にしているそうです。先生の指導されている学生は、先生の専門である冷戦時のアメリカ対外関係史に近いテーマが多いそうです。
(OSIPP博士前期課程 塚越和)