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松浦晃一郎氏 講演「無形文化遺産のグローバルな保護と日本の取り組み」

「無形文化遺産のグローバルな保護と日本の取り組み」
第8代ユネスコ事務局長 松浦晃一郎客員教授


2019年7月23日、大阪大学豊中キャンパスにて、「無形文化遺産のグローバルな保護と日本の取り組み」との演題のもと、第8代ユネスコ事務局長の松浦晃一郎客員教授の講演が行われた。

 

講演の中では無形文化遺産保護条約の採択過程やその意義、現状について語られた。1972年に採択された世界遺産条約では、建造されたときのもの(authenticity)や原型のままであること(integrity)が問われる有形の不動産が中核だが、現代に合わせた進化を受け入れるなどの独自の重要性を持つ無形文化遺産は、不動産に付随するものとの認識があったという。このような状況の中、無形文化遺産保護条約の締結に向けて取り組んだ事務局長が松浦先生だ。

アジアの国々に賛成が多く、ユネスコの保全対象は不動産であるべきとする西欧諸国は反対が多いといった状況から始まった交渉について、交渉努力を重ねる中で賛成国を増やし、欧州諸国や豪州、ニュージーランドなどの棄権がありながらも必要な批准数を獲得するまでの過程が、交渉に尽力した方々の名前も挙げられながら実感を持って話された。

条約作成過程については、1997年に開始した傑作宣言、無形の定義や具体的ガイドライン作成などの具体的取り組みについて語られた。登録への流れについても、条約採択やガイドライン作成に加え、2006年の批准国30カ国といった条件が整うことで2008年から具体的に動き出していった当時の状況を振り返りつつ、まずは傑作宣言で発表済の90件を候補として代表リスト作成を始めたこと、当時の日本の無形文化遺産の内容や取り組みなどについても語られた。また、例えば古墳のように場所が集中する有形資産に比べ、全国に跨って登録される事例の多い無形文化遺産の特徴を述べ、地方創生への効果も期待されているとのことであった。

講演が終わったあとは、様々な国籍の学生から日本語、英語での質問に対して丁寧に応え、非常に活発な質疑応答となった。

(OSIPP博士後期課程 田中翔)