2019.8.27
村本顕理 助教インタビュー
OSIPP経済系教員である村本顕理助教にインタビューを行いました。村本先生は京都大学で経済学の博士学位を取得され、2019年4月から本学にて経済数学、ミクロ経済学などの講義の教鞭をとられています。専門は応用ミクロ経済学理論で、特に契約理論、オークション理論を中心としたテーマで研究されています。
→いま取り組んでおられる研究内容について:
契約理論を中心とするいくつかのテーマを研究しています。博士論文では不完備契約理論をテーマとしました。例えばメーカー(買い手)と部品納品業者(売り手)が取引を行う場合、将来の状況(例:製品の売れ行き予測の変化)に対応する(例:売れ行き予測に応じて部品発注量を変更)ことが重要です。しかし将来起こり得る全ての状況に対する対応策を事前に契約で完璧に決めておくことは不可能(これを契約が不完備であるといいます)です。そのため、状況の変化に対応するため、メーカーと部品納品業者で随時再交渉して取引内容を決め直すことになります。このように交渉が何度も行われうる状況では、メーカーや部品納品業者は取引参加者の交渉力が重要になってきます。このような状況に関して理論的な研究を行いました。
現在は共同研究者とともに、関係的契約理論やオークション理論の研究に取り組んでいます。関係的契約理論は、雇用者と被雇用者の関係についてゲーム理論を用いて研究し、オークション理論は、理論的に導き出された解が現実と異なる事例の要因について研究しています。
→なぜこの研究に取り組むことになりましたか:
元々学部生時代は経済哲学に興味があり、ハイエクの経済学などを学ぶ中で組織、制度設計に興味を持ち始めたことから、大学院に入ってからは契約理論を学びました。学会などでの研究発表に関心を持って頂いた先生方から声を掛けていただいたり、他の研究者と話をして新しい研究のアイデアが生まれたりする中で、現在の研究テーマに辿り着きました。
→この分野の魅力、面白さ、最新の研究動向について聞かせてください:
経済学全体としては、データを使った研究が増えてきています。昔は理論だけの研究も多かったですが、現在は理論が蓄積され、データも揃ってきているからです。また、行動経済学に心理学的要素を取り入れた研究も多くなってきています。
契約理論は組織の経済学と重なる部分も多く、特にインセンティブや仕組みに注目するため、応用範囲が広いと言えます。世の中の様々な事象について契約理論的に解釈できることが多く、そのようなときに、研究の面白さを感じます。
→大学院でこの分野を研究していくためには、どういった勉強をしておく必要がありますか:
経済学では、ミクロ経済学、マクロ経済学、数学、計量経済学などの経済学における基本となる知識がコアコースと呼ばれる一連の講義で教えられます。興味を持っている分野が何であれ経済学の研究者を目指す際には、まずこれらの基本となる知識を習得しさらに英語力を高めることをお勧めします。
(OSIPP博士後期課程 田中翔)
助教 村本 顕理(むらもと あきとし)
学位 博士(経済学)(京都大学)
専門分野:応用ミクロ経済学理論
研究テーマ:契約理論、オークション理論
代表的な業績:
Akitoshi Muramoto, 2016. “Complementarity and inefficient renegotiation: an incomplete contract approach,” Economics Bulletin, vol.36(2), pp. 721-728.