著書・論文連携サイト

4月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の4月の研究業績をご紹介します。

・髙田陽奈子 先生 ・二羽秀和 先生

・赤井伸郎 先生  ・西連寺隆行 先生

・星野俊也 先生

 

 

Hinako Takata(論文)

“Reconstructing the Roles of Human Rights Treaty Organs under the ‘Two-Tiered Bounded Deliberative Democracy’ Theory,” Human Rights Law Review, Vol. 22 (2), June 2022, pp. 1-25,
(査読有)https://doi.org/10.1093/hrlr/ngac002

概要:この論文は、人権条約機関の民主的正統性問題を解決するための手がかりを提供することを目的としています。そのために、人権条約に固有の「民主主義」の構想として「二層の枠づけられた熟議民主主義」(Two-Tiered Bounded Deliberative Democracy)という独自の理論を提示し、この理論のもとで、人権条約機関の役割を、他のアクターの役割との関係の中で相対化しながら再構成することを試みています。

 

髙田陽奈子(論文)

「人権条約の実現における議会の役割――グローバルな法実践における規範・アクターの多元化の一例として」『法律時報』 94巻4号(2022年4月)58-64 頁 

概要:近年、特に国際人権法の文脈において、単一の実体としての「国家」のみならず、個別の国家機関が、それぞれに国連の人権条約機関や地域的人権裁判所と直接協働し、それぞれの特性に応じた固有の役割を果たすことにより人権条約の実現過程に参画すべき、との動きがグローバルなレベルにおいて高まっています。この論文では、これまであまり研究の対象とされてこなかった議会に焦点をあて、議会の役割に関するグローバルなコンセンサスの醸成とその内容、役割の実施確保のメカニズム、そして人権条約機関による議会の役割の尊重・促進、といった近年の実践的展開を概観し、それに基づいて、そうした新しい現象が、グローバルな法実践を把握する理論的レンズとしての「国際法」にもたらす理論的示唆について考察しています。

 

二羽秀和(論文)

「財政の持続可能性への信認が失われた下での量的・質的金融緩和政策からの出口」
『金融経済研究』第45号(2022年3月)89-98頁(査読有)

概要:本稿では、政府債務を安定化させようとする財政当局の意思に対する人々の信認の喪失が、日本銀行の量的・質的金融緩和政策からの出口戦略をどのように制約するのかを検討する。 モデル分析において鍵となる想定は、(1)財政当局が債務安定化に必要なプライマリー黒字の調整を行わないことと、(2)中央銀行が自身の財務健全性を維持することに対して責任を負っていることである。これらの条件の下で、一定以上の長期国債を保有する中央銀行は、利上げ局面において名目利子率の将来経路を自由に引き上げることができなくなる。

 

赤井伸郎(その他の記事)

「コロナ禍でのクルーズ振興への取り組み」巻頭言『港湾』(2022年4月)2-3頁

概要:コロナ禍において、クルーズ客船の運航は制限されている。今後、スムーズに運航を再開できるように、この2年間、オンラインで、関係者間の情報共有の場を9回開催し、のべ、875名が参加した。情報は貴重であり、今後も、役立つ情報の発信をしていきたい。

 

西連寺隆行 (その他の記事)

「EU指令による最低限の保障と基本権憲章の適用範囲」『比較法学』55巻3号(2022 年)112–122頁

概要:年次有給休暇との関係で、EU指令上設定された最低限の保障を上回る内容 をもつ国内措置へのEU基本権憲章の適用を否定したTSN事件先決裁定(2019年) を検討する。まず、同憲章の適用可能性が問題となった類似の事例と比較して、 先例との異同を明らかにする。また、本裁定が審査の出発点としてEUの権限の性 質を確認している点に着目し、EUと構成国間の権限配分の観点からみた本裁定の 意義と課題について指摘する。

 

星野俊也(その他の記事)

「誰がために国家は建設されるのか」『国際問題』No.706 (2022年4月)
https://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2020/2022-04_001.pdf(5月号発刊まで閲覧可能)

概要:冷戦終焉後から21世紀の初頭にかけて世界各地でまき起こった大規模な政治変動によって広い意味での国家建設の波が急激に広がった。そこでは連邦解体や分離独立による新国家の誕生や民主化や市場経済への体制移行による国造りもあったが、9・11事件後の対テロ戦争による政権打倒を経て新国家建設が試みられたアフガニスタンや、イラクでは混乱が続いている。ロシアのウクライナ侵略の呼び水も、親ロ地域での新「国家」の建設だった。国家建設は高度に政治的なプロセスだが、権力者の強欲や外部主体の恣意や国際テロ組織の浸透など絶え間ない試練によって真っ先にかき消されがちなのは民意であり、その人々の歴史や精神や夢である。国家建設のなかに人々が主権者としての能力を発揮できるよう、人づくりの強化を組み込むことが重要である。国造りにあたって、現地のオーナーシップを重視し、人づくりまで強調する支援は日本が最も得意な分野であり、人々が実質的に参画できる機会を切り拓くことが望ましい。誰がために国家は建設されるのか、その問いを忘れてはならない。

 

Hidekazu Niwa(Discussion Paper)

“Review of the Fiscal Theory of the Price Level” DP 2022-E-002(April 25, 2022)
https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/archives/DP/2022/DP2022E002.pdf

Abstract:This study reviews the fiscal theory of the price level (FTPL). Our goal is to briefly explain the following three points. First, how is an equilibrium determined in a simple model where prices are perfectly flexible and only one-period government bonds? Second, what is the intuition for equilibrium determination? Third, how does introducing long-term bonds or nominal price rigidities change results in the simplest case?

 

※論文に関しては、特に記載のないものは査読のない論文です。