Eventsセミナー・シンポジウム

尾崎 久仁子 判事(国際刑事裁判所 副所長) 講演会

2015年7月23日
GLOCOLセミナー:国際刑事裁判所の重要性と可能性

 7月23日、GLOCOLセミナーとして、国際刑事裁判所の副所長である尾崎久仁子判事を講師にお招きし、国際刑事裁判所の重要性と可能性や、国際司法におけるキャリア形成について講演を開催しました。国際刑事裁判所は1998年に「国際刑事裁判所規程」が採択されたことで常設の裁判所として設立され、「集団殺害犯罪」、「戦争犯罪」、「人道に対する犯罪」、「侵略犯罪」を犯した個人を訴追する管轄権を有する裁判所です。

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 講演の前半で尾崎氏は、国際刑事裁判所の特徴として、行政機能を担う他の国際機関とは異なり、司法の機能を担う機関であること、そして司法の中でも刑事司法という国内事項に関わる分野を扱う機関であることを挙げられました。その上で、国際刑事裁判所の設立の経緯や裁判の進め方、個人を訴追するためにどのような規程が設けられているのかといった裁判所の機能について語られました。

 講演の後半では、国際刑事裁判所が抱える課題である、捜査における国際協力の推進について触れられました。国際刑事裁判所は、裁判に向けて、捜査対象の領域国において捜査を行うに当たって、当該国の同意を得る必要があります。しかし、政治的な問題のため関わりたくない、あるいは、当該国が紛争中の場合、対応する能力がない、などの理由で捜査に協力してくれないケースもあり、国家とどのように協力し捜査を進めるかが課題であると述べられました。

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 講演の最後に、尾崎氏は、国際刑事裁判所の重要性は裁判を迅速に行い、最新の判例を作る点にあると述べ、「大規模かつ組織的な犯罪にどのように対処し、正義を実現するのが望ましいか」を判例により示すことを目的に働かれていると述べられました。

 質疑応答では、国際司法の分野でのキャリア形成に関する質問が多く寄せられ、尾崎氏は、若者が国際司法に携わるうえでのアドバイスとして、「雇用環境の不安定さに対する覚悟を持つこと」、「英語はただ話せるだけではなく、文章として記述できるドラフティング能力を身に着けること」などを挙げられました。

(OSIPP博士前期課程 藤田美由紀)

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