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9月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の9月の研究業績をご紹介します。

・赤井伸郎 先生  ・大久保邦彦 先生

・和仁健太郎 先生 ・髙田陽奈子 先生  

・木戸衛一 先生  

 

 

赤井伸郎 coauthored with 沓澤隆司・竹本亨(論文)

「コンパクトシティが健康に与える影響の分析」forthcoming in 『会計検査研究』第67号
2023年3月発行予定(Accepted in August 2022)(査読有)

概要:「コンパクトシティ」は,都市内での移動距離が短いため,歩行や歩行を伴う公共交通が移動手段に選ばれることが多く,その結果として歩行時間が長く住民の健康に良い影響を与えている可能性がある。パネルデータを用いた固定効果分析を行った結果、都市のコンパクト度が高い市町村ほど,①要介護認定率は低い,②健康の悪化がより深刻な要介護度の高いグループごとの認定率は低い,③国民健康保険における被保険者1人当たり医療費は低いことが明らかとなった。コンパクト度の高い都市の形成を通じて、歩行時間の増加、住民の健康状態も良好となり,将来的に要介護認定者に対する給付額や住民の医療費は低くなると期待される。

 

大久保邦彦(論文)

「法解釈方法論から見た改正債権法」松久三四彦先生古稀記念『時効・民事法制度の新展開』249-271頁 https://www.shinzansha.co.jp/book/b10018396.html

概要:改正債権法の若干の条文の解釈について、法解釈方法論の立場から批判的に検討することを目的とするもの。改正債権法の条文の中に、立法者の規律意図を正確に表現できていないにもかかわらず、 その条文の解釈が、立法者意思を軽視し、制定法の語義や意義連関を重視する例を見出したことが、執筆のきっかけである。

 

和仁健太郎(論文)

「国家による個人請求権の処理権能―戦後補償の理論問題」
『国際法外交雑誌』121巻2号(2022年8月)1-24頁(査読有)

概要:戦後賠償問題については国内に限っても大量の研究の蓄積があるが、多くの人が明確には認識していない問題がある。それは、個人請求権を処理する権能をもつのはどの国か、また、その権能の根拠は何かという問題である。本稿では、この問題について、いずれか1つの国が排他的な権能をもっているという考え方(lexsitus rule)と、それぞれの国がそれぞれ排他的ではない権能をもっているという考え方(Morelli原則)という2つの考え方があること、および、これらの考え方の内容と相互関係を明らかにした。

 

髙田陽奈子(書評論文)

「国際裁判所による国内的決定への敬譲をめぐる最近の議論状況」
『国際法外交雑誌』121巻2号(2022年8月)94-103頁(査読有)

概要:近年、国際裁判所の国内法秩序への影響力と管轄事項の拡大に伴い、国際裁判所による国内的な意思決定への敬譲(deference)の重要性はかつてないほどに高まっています。敬譲には、国際裁判所の正統性や専門性を補完し、国際裁判所と国内的な意思決定との摩擦を適切に調整するための役割が期待されているのです。このような背景のもと、本書評論文では、最近出版された、国際裁判所による国内的決定への敬譲を主題とする3つのモノグラフ(Fahner (2020)、Dothan (2020)、Shirlow (2021))を、とくに敬譲の論じ方や分析手法という視点から比較検討し、今後の敬譲研究に向けた課題を示しています。

 

木戸衛一(解説)

アンゲラ・メルケル演説選集―私の国とはつまり何なのか』創元社(2022年8月)

概要:アンゲラ・メルケル前ドイツ首相の治世16年を、3枚の写真(1990年11月2日連邦議会選挙におけるリューゲン島での有権者との対話、2015年9月10日シリア難民がメルケルと自撮りしようとした写真、2021年12月2日国防省での退任式)を紹介しながら概観し、そのプラスマイナスを論じた。彼女が強調した市民との信頼関係は、世界政治が大きな曲がり角に差し掛かっている中、改めて心に刻まれるべきである。

 

赤井伸郎(その他の記事)

「コロナ禍で変わる都市構造」『十字路』日本経済新聞(2022年9月22日付夕刊)

概要:コロナ禍での働き方・住み方は、各地域の都市構造にも影響する。例えば、通勤頻度の変化、働く場の変化、居住地の変化である。これらは、地方自治体の財政運営にも影響を与える。コロナ発生前後の地価および人口変化を500メートル四方の地域メッシュで比較したところ、人口減少が加速、地価も下落していることが明らかとなった。また、都市構造に着目すると、都市の中心部から離れるにしたがって、その減少幅は縮小していることが明らかとなった。今後、コロナと共生していく時代になり、従来とは異なる都市構造が生まれてくる。自治体の都市政策、財政政策、国の国土形成政策も設計していくことが求められる。

 

赤井伸郎 coauthored with 沓澤隆司・竹本亨(Discussion Paper)

「COVID-19 の流行が都市内の人口分布に与える影響の分析」DP-2022-J-003(September 3, 2022) 
http://www.osipp.osaka-u.ac.jp/archives/DP/2022/DP2022J003.pdf

概要:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が、都市の全域において人口変化に負の影響を与える可能性がある。特に、都市の中心近くでは人と人との接触の機会が多いために、その影響も大きくなることが考えられる。その結果、都市内の人口分布も変化する可能性がある。そこで、コロナ発生前後の地価および人口変化を人口5万人以上の市町村について500メートル四方の地域メッシュで比較したところ、人口減少が加速、地価も下落していることが分かった。また、都市構造に着目すると、都市の中心部から離れるにしたがって、その減少幅は縮小している。今後、コロナと共生していく時代になり、新たなライフスタイルの下で、従来とは異なる都市構造が生まれてくる。それを踏まえ、自治体の都市政策、財政政策、国の国土形成政策も設計していくことが求められる。