修了生

【卒業生近況】中村啓太さん/共同通信社 勤務

【卒業生近況】中村啓太さん/共同通信社 勤務


2007年にOSIPP博士前期課程を修了された中村啓太さんよりメッセージをいただきましたので、ご紹介します。
(左写真:2019年ラグビーW杯関連の取材時 岩手県釜石市にて)

 

 

 

私はOSIPP修了と同時に記者として共同通信社に入社し、新潟支局、仙台支社、高松支局をへて18年春より国際局海外部に所属しています。元々文章を書くのが好きだったことや社会への影響力の大きさなどから、記者という仕事には興味がありました。

 

記者というと政治部や経済部、社会部などが一般的によく知られているかもしれませんが、海外部は英文記事を配信する部署で、ジャンルにとらわれずあらゆる分野をカバーしています。よく外信部の仕事と間違えられますが、外信部は世界中で起こっている出来事を日本の読者向けに日本語の記事で発信するのに対し、海外部では主に日本関連のニュースを海外の読者向けに英語の記事で発信する、と言えば分かりやすいかもしれません。英文記者には記事を書くための英語能力が求められるのは言うまでもありませんが、日本の政治や経済、社会や文化についての知識も必要ですし、難しい話でも要点をかいつまんで分かりやすく伝える能力、どんなことにも興味を持って取り組む好奇心や探究心などが求められるという点では他部署の記者と何ら変わらないと思います。

 

国際会議会場でのIDパス
左:ASEAN関連閣僚会合(’22年8月カンボジア)
右:G20外相会合(’22年7月インドネシア)

日本語の自社記事を翻訳するという作業も私たちの大事な仕事ではありますが、共同通信の海外部には首相官邸や主要官庁、民間企業やマーケットなどを担当する外勤記者がそれぞれいて、基本的には日本語の編集部門とは別に活動しています。例えば重要な国際会議の取材では、いち早く速報を打つため海外にも出張します。おそらく日本の大手メディアの英文記者でこれほどまでに独自に取材、執筆させてくれる会社はほかにないと思います。

私は今、外務省と防衛省を担当しています。OSIPPでは米英同盟を研究テーマに選び、国際関係や安全保障に関する授業を多く選択しましたが、最近になって当時学んだことを所々で生かせているように感じます。一方で、昨年末までの約2年間は財務省や内閣府の担当でしたし、支社・支局時代もそのような知識が求められるような場面はほぼありませんでしたので、久しぶりすぎて忘れていることも多々あります。そういった意味では、自分の仕事はOSIPPで学んだことをフルに生かせている仕事か、と問われると返答に窮してしまいます。しかし、OSIPPでの2年間は先輩・後輩含め本当に様々な興味分野や目標を持つ個性豊かな仲間と交流することができ、そのことは異なる価値観への理解やコミュニケーション能力の向上にもつながり、記者としての仕事に少なからず役に立っていると思います。

 

大学院で研究するということは、単に自分の興味ある分野を究めるためだけの行為ではなく、その研究で社会に貢献するという側面もあるかと思います。同時に、必ずしも個々人がそこまで気負う必要はないとも思っています。そもそも私自身が院生時代にそのような成果を残せたという自信がありません。ただ、自分の好きなことをして、それが結果的に社会にも役立つのなら、それは大変素晴らしいことだと思います。院生の皆さんには可能性が無限に広がっています。OSIPPで学ばれている方も、あるいはこれから学ばれるという方も、経験した一つ一つの物事を糧に、様々な分野でご活躍されることを切に願っています。

2019年ラグビーW杯関連の取材時 岩手県釜石市にて