松浦晃一郎氏(ユネスコ前事務局長) オープン教室
2015.11.30
国連創設70周年・ユネスコ設立70周年記念特別セミナー第4弾
「70周年を迎えたユネスコの危機と今後の展望」
10月20日、国連教育科学部文化機関(ユネスコ)前事務局長の松浦晃一郎氏を講師にお招きし、オープン教室「70周年を迎えたユネスコの危機と今後の展望」を豊中総合学館において開催しました。本講演で松浦氏は、ユネスコ70年の歴史を振り返り、ユネスコにこれまでに訪れた二つの危機について語られました。
第一の危機は1984年のアメリカとイギリスの脱退で、脱退理由の一つに事務局の非効率性が指摘されたことから、早急な改善が求められました。松浦氏は1999年にユネスコ事務局長就任された直後より経理の透明性向上等の財政改革を断行し、このことがアメリカのユネスコ復帰につながったと述べられました。しかし、2011年のパレスチナ加盟に反対してアメリカは、ユネスコ分担金の支払いを停止し、これが現在ユネスコが直面している第二の危機となっています。分担金の最大拠出国であるアメリカによる支払い停止は、事務局を財政面で締め付けており、更なるコスト削減の努力が求められているとのことでした。
次に松浦氏は、日本政府がユネスコへの分担金の支払い停止を検討しているとの報道について、「ユネスコだけではなく国連ファミリー全体との付き合いを考えて決定するべき」と述べられました。加えて、ユネスコの役割について、「平和の砦を築くためにはユネスコが担当する教育、文化、科学、コミュニケーションといった分野で各国の国民が相互に理解し、誤解や疑念などを払拭しなければならない」と、同事務局の重要性についても述べられました。
講演後には、参加者からの質問を受けて、今後ユネスコをはじめとする国際機関で日本人が活躍することの重要さについても述べられました。「日本の国際的な存在感が低下しているのは確かであり、日本人が国際的な問題に目を向けてもっと活動に参加していくことが必要」と、熱をこめて語られました。
(OSIPP博士前期課程 芥川晴香・藤田美由紀)
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