【院生投稿】金アンジェラさん(OSIPP博士前期課程)
2024.7.16
【院生投稿】金アンジェラ(OSIPP博士前期課程)
はじめまして!今年の4月にOSIPPに入学した金アンジェラです。大学院進学の理由と今後の展望について、お話したいと思います。
(写真:卒業した大学の学位記授与式後に撮影(2024年3月))
<OSIPP進学に至るまで>
・バックグラウンド
進学の経緯について説明する前に、私のバックグラウンドについて触れたいと思います。
私はナイジェリアのイボ族の父と在日韓国人の母を持ち、日本で生まれ育ちました。幼稚園から高校までの15年間は、カトリックミッションスクールに通いました。カトリックミッションスクールの特性として、貧困問題を抱える国々への扶助に協力する機会も多く、この国際色豊かな環境で育った経験から、国際社会や国際問題に強い関心を持つようになりました。
特に小学5年生のとき、来校したJICAの職員の講演を聞き、モニターに映し出される貧困にあえぐ子どもたちの写真を見たことがきっかけで、発展途上国や貧困問題に関心を持つようになりました。幼いながらも「世界には十分に食べられない子どもがいるんだ」と感じたその経験は、世界の状況を知ろうとする意欲を持つきっかけになりました。それ以来、発展途上国や貧困問題に対する関心は消えることなく、大学でも学科での専攻と並行して、発展途上国、特にアフリカ地域について学び続けました。
・認識の変化
学びを進めるうちに、日本とアフリカ地域を、無意識に「先進国と発展・開発途上国」「支援する側と支援される側」「豊かな国と貧しい国」と認識していることに気付きました。また、「アフリカ」と聞いて浮かぶものは貧困、紛争、民族分断といったマイナスな事柄をイメージしていることにも気付きました。実際にナイジェリアやアフリカ地域に一度も行ったことがないのに、そうした「勝手な」イメージを持っていました。
このようなイメージは、アフリカ地域に対するステレオタイプともいえます。なぜ私はそのようなイメージを持ってしまったのか。その理由を探しているとき、父が母国であるナイジェリアの様子を話してくれた時のことを思い出しました。その話のほとんどは、メディアでは耳にしたことのない内容——例えば、輸入せずとも自分たちで賄うことができるほどの豊かな資源があることなど——でした。父の話を通じて、メディアで伝えられる「アフリカ」と実際の「アフリカ」には大きなギャップを感じました。そして、人々がアフリカに対するステレオタイプなイメージを持つのは、メディアの報道によるところが大きいのではないかという疑問を持つようになりました。
・ホーキンス先生との出会い
高校3年生の時には、「貧困問題と日本の国際報道の在り方」というタイトルでレポートを執筆しました。日本のメディアで、日本語で読めるアフリカ地域やその他の発展途上国に関する情報を集めようとしましたが、情報が古かったり、そもそも情報が少なかったりと、十分に集めることができませんでした。一方で、英語や外国メディア(当時は主にThe Guardianを参照)を用いて検索すると、貧困や紛争、民族分断といったニュースだけでなく、その国の実情や文化、一般人へのインタビューといった記事も取り上げられており、日本と海外ではメディアが国際ニュースとして取り上げるコンテンツに違いがあるように感じました。
そして、その情報収集の際に出会ったのがGlobal News View(GNV)で、そこから今の指導教員であるVirgil Hawkins先生を知り「同じような問題意識を持って研究している方がいるのだ」と感銘を受けました。ここでGNVやホーキンス先生に出会っていなければ、今、私はこの記事を書いていなかったことでしょう。
・進学の決意
こうした日本のメディアにおける国際ニュース報道の在り方に疑問を持ち、メディア・ジャーナリズムを学べる学科であるという点と大学の持つグローバルな環境に魅力を感じた点から、上智大学文学部新聞学科に進学を決めました。ジャーナリズム論やマスメディア論、国際ニュース報道について学ぶ中で、4年間では自分の問題意識を消化できない、時間が足りないと感じるようになり、かねてから気になっていたホーキンス先生のもとで学びたいと思うようになりました。
大学院進学を決める前は、他の学生と同じように就職活動をして、内定もいただいていました。しかし、ずっと心の中にあった大学院進学への想いが捨てきれず、かなり悩んで内定を辞退し、進学という選択を取りました。ギリギリになって決めた進学だったので、準備も不十分だったこともあり、大学4年生の秋学期から1年間休学し、OSIPP受験に向けて英語の勉強や研究計画書の作成といった準備を進めました。
OSIPPに入学して早3ヶ月…
幸運にもOSIPPに入学できて、早くも3ヶ月が経ちました。さまざまなバックグラウンドを持つ友人がたくさんでき、みんなでランチしたり、時には飲みに行ったりと、日々楽しく過ごしています。大学時代までの友人たちからは「すごく生き生きしてる!」「若返った?」などと言われるくらい、今の生活が楽しく、まさに自分の人生を歩んでいる感覚があります。進学を迷って精神状態が不安定だった当時の自分に、今の姿を見せてあげたいです。もちろん、勉強も必死にがんばっています!
<今後の展望>
今後は、日本のメディア(新聞とテレビ)における国際ニュース報道に注目し、アフリカ地域のニュースに関する報道量や報道内容を分析したいと考えています。日本のメディアだけでなく、外国のメディアとも比較することで、日本のメディアの報道傾向を明らかにすることを目指しています。また、グローバル化が進む現代社会において、多文化共生への適応が求められる中、現状の外国関連ニュース報道は、情報の受け手に偏った認識やイメージを与えている場合もあるのではないかと感じています。そこで、ニュースの送り手側にも着目し、国際ジャーナリストや海外特派員経験者へのインタビューを通じて、メディアのゲートキーピング機能を分析したいと考えています。
私は、これらの研究を通じて国際ニュース報道の在り方を再考し、多文化共生社会の実現に寄与することを目的としています。他国に関する報道は、グローバル社会や多文化共生が叫ばれる中で重要だと考えており、研究の結果から国際ニュース報道の改善策を提案することで、より公正でバランスの取れた情報提供ができるようになればと願っています。