2024年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会
2024.12.20
2024年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会
2024年12月4~6日、博士前期課程(修士)・博士後期課程(博士)論文の「2024年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会」がオンライン形式で開催された。
(写真:井筒穂奈美さんの発表の様子)
口頭報告審査会では、修士号申請者33人と博士号申請者5人が発表し、博士論文進捗状況報告会では、来年度の博士号取得を目指す15人の学生が日々の研究の成果について報告した。 博士前期課程の学生には1人あたり20分、博士後期課程の学生には40分が与えられ、その時間の中で発表と質疑応答に臨んだ。修士号と博士号の申請者は、今回受け取ったコメントを踏まえ、1月の論文の最終提出に向けて論文執筆最終段階に入る。
2024年度の修士号申請者の一人である井筒穂奈美さんは「県の男女共同参画推進施策が女性の議会参入に与えた影響―鳥取県と島根県の事例からー」と題した論文を発表した。男女共同参画推進施策の取組の積極性の程度が県によって異なることに注目し、このような行政の取組が女性の議会参入を促進するかについて差の差分析法によって検証していた。県レベルで取り組まれる男女共同参画は市町村議会への参入は促すが、県議会への参入に対しては、効果は限定的であるという結果を示した。なぜ県議会への効果は限定的であるかに対しては、立候補にかかる費用を一つの仮説として示しつつ、今後の研究の課題であると報告を締めくくり質疑に対応した。
博士後期課程2年次の野津成希さんは “Decentralization and Scale” というタイトルで現在進めている研究の進捗を報告した。地方分権を博士課程の中心テーマとして研究を進めている野津さんは、今回の報告において、日本の戦後のユニークな状況に注目し、警察組織の地方分権化が地方支出や警察の活動等に与える影響を、回帰不連続デザイン等を用いて分析した結果を発表した。分析の結果、分権化により支出は拡大するものの、各地域に適した公共サービスの提供が可能になるという地方分権化の理論と整合的な実証結果が得られたことを示した。質疑応答で受け取ったコメントをもとに、今後は追加的な分析を行うことで、より説得力の高い研究に仕上げたいと語った。
報告会は前年度に引き続き今年度もオンラインで開催されており、多くの博士前期・後期課程1年次の学生も聴講していた。筆者もいくつかの報告会に参加したが、どの報告においても、主査の先生だけではなく副査を務める先生方からの質疑も活発だったことが印象的だった。論文の分析内容に加え、論文にする際のまとめ方や、その研究の位置づけに関する質疑応答などを聞いたことで、筆者自身も自分の研究に対してより真摯に向き合うきっかけとなり、非常に有意義な機会となった。来年度の自身の研究発表に向けて準備を進めていきたい。
(OSIPP博士後期課程 吉良光冬)