【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(杉浦卓弥さん)
2024.12.18
【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(杉浦卓弥さん)
今回は、OSIPP博士後期課程に所属する杉浦卓弥さん(D1)にインタビューしました。
杉浦さんは、国際法学の分野で船舶に対する国家の権限に関する歴史研究をしています。このインタビューでは、研究内容や手法、OSIPPでの学生生活について聞きました。
研究者を志した理由や経緯を教えて下さい
研究の世界に興味を持ったきっかけは、他大学の学部一回生だったときに受けた授業で、先生が研究の話をしていたことだったと記憶しています。もっともその先生のご専門とは、全く異なる分野を専攻していますが。
現在の問題意識、研究内容について教えて下さい
国家が船舶に対して有している権限の範囲について研究しています。
基本的に国家は、自国船籍の船舶に対して広範な権限を有しています。しかしながら、自国のみが有している権限が何で、自国も他国も有している権限は何かで見解の相違が生じます。例えば、公海上のA国籍船でB国民がC国民を殺害し、その後に当該船舶がD国に寄港した場合、この事件を捜査し、また加害者を逮捕、訴追できるのは船籍国たるA国に限られるのかといった事例です。そのような対立は、国家間でこれまでに何件も発生し、現在でも論争的なテーマです。
私の問題関心は、こうした船舶利用を巡る規律の在り方を歴史的に辿りながら、(国際)法の機能と(国際)法学の役割について考えることです。船舶利用を巡る規律の在り方は、海洋秩序の形成と維持の中心を占めてきました。それと伴に国際法が発展してきたと言われることもあります。その点で、船舶利用の国際的規律は、(国際)法の機能と(国際)法学の役割について考えるには格好の題材だと感じました。
これまでの研究や現在の研究活動をご説明いただけませんか
これまでの研究は、船舶に対する国家の権限について、漁業問題に限定して行ってきましたが、問題解決の手掛かりが得られませんでした。そのため、現在は、国際法上、なぜ国家が任意の船舶に対して一定の権限を有するのかという根拠の明確化に取り組んでいます。
日本学術振興会特別研究員になってみて
「なんで、私が学振に!?」と当時も今も思っています。結果発表の当日は、私はその審査結果が信じられなかったのですが、今年の5月に通帳を見て、手違いではないと確信しました。
特別研究員になって以後、特に大きいと感じているのは、日々のお金の使い方に対して、過度に敏感になる必要がなくなったことです。また、残念ながら私の研究内容に関するものではありませんが、特別研究員になると利用申請ができるデータもあると聞いたので、金銭面以外にも恩恵を受けている人もいると思います。
今年度から特別研究員同士の交流会も開かれることになりました。今年は6月15日(土)に京都で開催されました。そこでの他の院生との交流は大きな刺激になりました。
特別研究員-DC フレンドシップミーティング 2024 in Kyoto
研究者としての将来の展望
まずは現在取り組んでいるテーマで自分が納得できる博士論文を書くことです。船舶に対する国家の権限については、海洋法分野での主要なテーマであり、歴史が深く、先行研究も多いのですが、意外とまとまった論文がないと感じています。そのため、学界での今後の議論の叩き台となるようなものを提供したいと考えています。
特別研究員を目指す後輩にメッセージをお願いします
頑張ってください。見ている人は見ています。申請書に関しては、OSIPP生であれば、過去にOSIPPで特別研究員に採択された申請書をOSIPPライブラリで読むことができますし、スタッフの方々による添削サービスもあります。情報や伝手が限られている中で、こうした環境は大きかったです。
OSIPPは縦横の繋がりが濃く、また各院生の関心も様々で、話をしていると新鮮さを感じることも多いので、研究するには良い環境だと思います。毎年1~2名ほど社会人の方も入学するので、専攻分野や関心だけでなく、バックグラウンドも多様な人たちが在籍しています。
(OSIPPライブラリー)