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【院生紹介】齊藤弘晃さん(OSIPP博士前期課程)

【院生紹介】齊藤弘晃さん(OSIPP博士前期課程)


OSIPP博士前期課程に在学中の齊藤弘晃さんにインタビューを行いました。齊藤さんは、メーカーで海外営業企画の仕事をしながら長期履修制度を利用してOSIPPの博士前期課程に入学され、3年目となる今年修士論文を提出されました。(写真:齊藤弘晃さん)

 

社会人学生になろうと思ったきっかけ、OSIPPに入学した理由やきっかけを教えてください

学部生時代に台湾へ留学し、多様な民族が共存している社会を目の当たりにしました。それがどのように実現しているのかに強い関心を持った為、学部卒業時から大学院進学自体には興味がありました。一方で、当時は周囲から「大学院に行くと就職が難しくなる」といった話をよく聞いていたこともあり、まずは就職することを選びました。ただ、大学院進学という選択肢はその後も常に意識していました。社会人として仕事をしながら大学院に通う人は身近にほとんどおらず、最初は自分にできるのか不安もありましたが、「人生で後悔しないように一度挑戦してみよう」と思い、社会人10年目頃の仕事が少し落ち着いたタイミングで大学院進学を決意しました。OSIPPを選んだ理由は主に二つあります。一つは、国際政治をより専門的に学びたいという関心があったこと。もう一つは、OSIPP出身の友人から話を聞き、自分の関心分野を深く掘り下げられる環境だと感じたことです。

 

社会人をしながらの出願や学生生活をどのように両立されましたか

社会人として働きながらの出願準備は、ちょうど社内の昇格試験の勉強時期と重なっていたこともあり、正直大変でした。研究計画書を書くのは初めてだったので、参考書を読んだり、関連論文を探して読んだりしながら、自分が取り組みたい研究テーマを具体化していきました。

授業については、集中講義や土曜日の授業もあるものの、平日の昼間に開講されるものも多く、仕事との調整が大変でした。OSIPPの長期履修制度を利用し、通常の2年ではなく、3年で単位を取り切りました。入学当時は実務担当者だったので、与えられた仕事をこなし、残りの時間を授業の課題や研究に充てていました。例えば、当時は在宅勤務制度の「中抜け制度」を使い、1時間半ほど中抜けしオンラインで授業を受け、その後すぐ業務に戻り繰り越された定時まで働くといった形です。2年目の半ば頃までは、有給休暇を使って対面のゼミにも参加していましたが、途中から職場で責任者の立場になり、会議や業務が増えて時間のコントロールが難しくなったことで、オンライン参加に変更したこともありました。週末には友人と出かけたりする時間も取っていたので、工夫次第で仕事と学業は両立できると感じています。

 

研究とお仕事の関連について教えてください

私の研究では、台湾における多文化主義政策がどのような歴史的背景のもとで形成され、社会統合の理念として機能してきたのかを分析しています。台湾社会には、福建系や客家系といった漢民族内部の多様性に加え、先住民族、戦後に中国大陸から移住した外省人、さらに近年増加している東南アジア系の新住民など、複数の集団が存在します。日本統治期には、中国本土とは異なる経験を共有する中で「台湾人」という意識の萌芽が生まれましたが、戦後は国民党政権の下で中国本土のナショナリズムが強く押し出され、多様な文化やアイデンティティは抑圧されてきました。その後、1980年代以降の民主化を契機に、先住民族や客家文化の復興が進み、多文化共存を重視する傾向が強まっています。私の研究では、こうした歴史の積み重ねを通じて、台湾がさまざまな集団を排除するのではなく「包摂」を重視し台湾人としての社会統合の枠組みを形成してきた過程を歴史資料や政策文書を読み込みながら分析しています。

仕事では、メーカーで海外営業企画を担当しています。いわゆる営業というよりも、本社側から海外拠点をサポートする役割です。海外拠点の財務状況を把握し、赤字拠点への改善提案などを行っています。現在は中国担当の責任者を務めています。研究テーマ自体は業務と直接結びついているわけではありませんが、担当国が中国であることから、米中関係や中国の政策動向などを調べる必要があります。その際、一次資料や先行研究の探し方などの研究で身につけた「研究者的な視点」が役立っています。単にニュースを通じた「誰かがこう言っている」という情報にとどまらず、その国が何を目指し、どのような政策を打ち出しているのかを、自分の力で情報にアクセスし自分の言葉で説明できるようになった点は大きな変化です。また、論理的に考える力が身についたり、部下のレポート添削がしやすくなったりと、間接的に業務に活かされている部分も多いと感じています。反対に、仕事を通じて文章を書く機会や報告の経験を積んでいることが、研究において役立っているとも感じます。一度社会人を経験した上で、自分の意思で大学院に進学しているため、「どの授業も無駄にしない」という意識が強くなり、有意義に学習したり学生時代には見えなかった視点から物事を捉えられるようになったりした点も大きいです。

 

仕事と研究の両立はやはり大変そうですが、社会人として学ぶモチベーションは何ですか

オンラインでのインタビューの様子

仕事と研究の両立は確かに大変ですが、仕事とは別の軸として「研究」があることで、仮に仕事でつまずいたとしても「自分が本当にやりたいことを学べている」という実感が支えにもなっていました。もともと研究テーマへの強い関心があり、その分野の授業を受けたり、先生方のお話を直接聞いたりできること自体が大きなモチベーションで、好きなことをしているからこそ続けられた面もあります。結果的に、仕事と研究の間に相乗効果が生まれていたと感じています。また、OSIPPには社会人学生も比較的多く、社会人同士で仲間ができたり情報交換ができたりする利点もありました。留学生とも交流でき、人とのつながりが広がったことも大きな魅力でした。

 

社会人で大学院進学を考えている方にメッセージをお願いします

社会人として働きながら大学院に通うのは、決して楽ではありませんが、時間の使い方や工夫次第で十分に両立は可能だと思います。「学生時代は研究を諦めたけれど、やはり挑戦してみたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。思い立ったら吉日です。ぜひ一度、チャレンジしてみてほしいと思います。

(OSIPP博士後期課程 池内里桜)