【院生紹介】井筒穂奈美さん(OSIPP博士後期課程)
2026.1.21

【院生紹介】井筒穂奈美さん(OSIPP博士後期課程)
博士後期課程1年の井筒穂奈美です。
私は現在、兵庫県庁で行政職員として勤務しながら、政治学の研究に取り組んでいます。今回は特に、社会人として働きながら大学院への進学を考えている方に、これまでの経験を共有できればと思います。
1.これまでの経歴

地方創生のイベントに向けた打合せにて
大学卒業後、新卒で東京に本社のある総合電機メーカーに就職しました。発電所のタービンや発電機を製造する電力・エネルギー部門で、国内外の拠点の内部監査や国際規格の取得、M&A等を担当しました。3年間勤務した後、より公共性の高い仕事がしたかったこと、また地元である関西に戻りたかったことから兵庫県にUターンし、県庁に入庁しました。
兵庫県庁では、高齢者政策、人口政策、税務、内閣官房への出向、予算・労務管理を経験し、その後、自己啓発等休業制度(※1) を利用してOSIPPの博士前期課程に入学しました。昨年3月に修了し、職場に復帰するとともに博士後期課程に進学しました。現在は休職前から在籍していた部署に戻り、地方創生の事業を担当しています。
学部生の頃から大学院で勉強したい気持ちはあったのですが、早く経済的に自立したかったことに加え、当時は関心分野が定まらなかったことから、就職を選びました。一方で、いつか大学院に進学したいと思っていたため、働きながら勉強をしつつ、機会をうかがっていました。OSIPPに入学した時には、最初の就職から10年が経過していました。
2.研究テーマとOSIPPを進学先として選んだ理由
女性の政治参入について、計量的な手法を用いた研究に取り組んでいます。具体的には、なぜ女性の政治家が少ないのか、どのような条件が整えば女性が選挙に立候補・当選するのかに関心があります。学生時代は性別による違いを意識することはありませんでしたが、いざ社会に出てみると、女性が働き続けるには多くのハードルがあることや女性のリーダーが少ないことを実感し、なぜ男性と女性でこのような違いが生じるのか、その背景にある要因を知りたいと思ったのがきっかけです。ジェンダー問題を研究テーマにすることは決まったものの、どのようなアプローチで研究しようかと悩んでいた時に、兵庫県庁から内閣官房へ2年間出向する機会を得ました。自治体向けの交付金事業の担当として、予算配分をめぐり国会議員や首長から寄せられる「要望」に対応する中で、政治家が持つ権限と影響力の大きさを目の当たりにし、政治が社会のあり方を左右していると強く認識したことから、政治という切り口でジェンダー問題を研究しようと考えました。
進学先を決めるにあたって政治学の本を読んでいたところ、OSIPPの松林哲也先生が計量的な分析手法を用いて政治を研究されていることを知りました。業務でデータを扱う機会が多く、データ分析についても学びたいと思っていたため、松林先生の研究室であれば、ジェンダーと政治の研究に取り組みながら計量分析のスキルも習得できるのではないかと考え、進学を決めました。
3.仕事と研究をどのように両立しているのか
授業については、1学期に1科目(2単位)ずつ履修する計画としています。先学期は土曜日に開講された小原美紀先生の労働経済学の授業を履修しました。今学期は休日出勤が多くなることが事前に分かっていたため、金曜日の午後に代休を取得し、北村周平先生の計量経済学の授業を受講しています。論文指導はオンラインでのやり取りに加え、授業で通学した際に時間を取っていただき、対面での指導も受けています。また、年に数回ある学会や研究会は週末に開催されることが多いため、業務に支障をきたさずに研究活動に取り組めています。
時間の確保が容易ではない面もありますが、職場の上司や同僚、そして指導教員の松林先生をはじめとするOSIPPの先生方・スタッフの皆さんの理解と応援をいただきながら、何とか仕事と研究を両立しています。OSIPPには社会人学生が多く、情報交換をしたり、励まし合ったり(時には飲み会も)しながら、ともに学べる仲間がいることも支えになっています。また、社会人以外の学生の皆さんも院生室で気軽に声をかけてくれたり、私の関心分野の論文を教えてくれたりと、OSIPPでのつながりが研究の励みになっています。
4.社会人経験は研究にどのように活かせるか

兵庫県公館にて
現場の実態を知っていることは、研究を進める上での足掛かりになっていると思います。特に私の場合は研究テーマと業務が関連しているため、現場での実感と照らし合わせながら研究の問いや仮説を考えられることは強みになると感じています。実際に修士論文では、行政の施策が女性の政治参入に与える影響について研究しました。また、仕事を通じて培った資料作成やプレゼンテーションのスキルも研究発表等で活かせています。
反対に、研究を通じて得たものが日々の仕事に活かせていると感じる場面もあります。例えば、担当する施策の効果検証では、様々な制約から厳密に因果効果を測ることは難しいものの、「誰に対して、どの経路で、どのような効果を及ぼすのか」という視点を常に持つようになりました。また、業務で課題に直面した際には背景に構造的な要因がないか考えたり、同様の事例が既に研究されていないか文献を調べたりする習慣が身につきました。目の前の仕事と適切な距離をとり、俯瞰的に見られるようになったことは自分にとって大きな変化でした。
5.社会人学生としてOSIPPへの入学を考えている方へ

神戸・須磨の鉄拐山にて
仕事では多くの場合、テーマは組織や上司から与えられますが、研究は自分自身の興味・関心を起点として取り組むことができます。そこが仕事と研究の違いであり、研究の魅力の一つだと感じています。仕事とは別に自分の中に積み上がり、生涯を通じて取り組めるテーマを持つことは、大きな喜びにつながると思います。
OSIPPには様々な分野の先生や幅広い関心を持つ学生が集まっており、自分の視野を広げられます。長期履修制度やオンラインでの授業・論文指導など、仕事と研究を両立するための制度も充実していて、個人の状況に合わせて柔軟に研究計画を組み立てることが可能です。大学院進学に関心をお持ちの方はぜひ思い切って、一歩踏み出してみることをおすすめします。
※1 大学等における修学や国際貢献活動を希望する常勤の公務員に対し、その身分を保有したまま職務に従事しないことを認める休業制度。国家公務員は国家公務員法、地方公務員は各自治体の条例で規定されています。
