【院生紹介】山口真有美さん(OSIPP博士後期課程)
2026.2.24

【院生紹介】山口真有美さん(OSIPP博士後期課程)
博士後期課程2年の山口真有美です。
9年の看護師経験を経て、大学病院での臨床から看護学部教員となりました。修士課程では研究に専念し、大阪大学大学院にて看護学の修士号を取得したのち、他大学の博士課程でさらに知見を広げました。現在は実務の場で看護政策に携わる傍ら、再び阪大の門を叩き、OSIPPで研究を続けています。看護学から公共政策へ。現場の実感を政策の議論に耐えうるかたちに整え直したいと思っています。(写真:ENA Emergency Nursing Conference 2019, Austinにて。下段左から二人目が筆者。)
1.研究テーマ
私の研究テーマは救急外来看護師の役割です。一次から三次救急対応の救急外来で働いていたとき、先輩たちの知識の豊富さとそれを支える勉強量、それでいて細やかな気遣いに圧倒されました。自分も先輩たちのようになりたいと思う一方で、どこかで追いつけなさも感じており、この現場の看護師たちが思う存分力を発揮できるよう、場を整える側となる研究者を志しました。
もう一つ、「緊急で重症度の高い2割の患者を見極めるのはもちろんのこと、残り8割の軽症受診を減らす努力も不可欠である」と常々感じていました。救急外来を受診される方々にとっては、その時その場がまさに一大事であり、受診時の興奮や混乱、帰宅後の不安から再受診に至ることも少なくありません。そこで、看護師が最後にかける「何かあったらいつでも来てくださいね」という言葉だけではなく、家庭でのケアに繋がる判断材料を一つでも持ち帰ってもらえたら、状況は変わるのではないか、と考えていました。こうした臨床から立ち上がった臨床疑問をもってから、もう20年になります。
当時はトリアージやドクターヘリがテレビで盛んに取り上げられ、救急外来を受診して帰宅する患者は救急医療の対象ではない、と言われた時期もありました。それでも諦めず、糖尿病看護の研究室に所属しながら研究を進めました。他領域の研究者とのディスカッションを通して問いの形を変えながら、次第に医療資源の配分や地域の救急外来のセーフティネットとしての役割を俯瞰して見たいと思うようになりました。
2.OSIPPへの入学
看護の博士課程在籍中は、学会の医療政策委員となり救急外来看護の診療報酬獲得を目指し、調査を行なってきました。臨床家の現場感覚は、そのままでは政策の議論に乗りにくく、政策決定において通用するエビデンスをどう示すかという壁にぶつかっていました。
看護学では「看護は実践の科学」と教えられます。これは単に客観的なデータのみを追うのではなく、患者さんやご家族の置かれた状況、さらにはその場の対人関係といった個別のナラティブの中で最適なケアを探究することを意味します。一方で政策は、集団や制度、資源配分を扱い、比較可能な指標や説明責任が求められます。現場の実感がそのままでは届きにくいのは、この根拠の形の違いが大きいのではないかと感じました。看護の実践を検証可能な問いに整える必要性を強く意識するようになり、修士時代から慣れ親しんだ緑豊かな環境や、落ち着いて研究に没頭できる空間がある阪大で政策を学ぶことにしました。
OSIPPには、研究生としていくつかの講義の聴講をしてから、翌年に入学しました。現在はOSIPPでの学びと実務の現場で得る気づきから、理論と実践を往復する日々を送っています。これは周囲の理解とOSIPPの先生方のサポートのおかげであり、本当に感謝しています。OSIPPの仲間たちの研究は広く看護政策にもつながることが多く、いろいろな刺激とインスピレーションをもらっています。
3.OSIPPを目指す皆様へ
現在は東京で働きながら、月に一度のペースで豊中キャンパスに通っています。遠距離での両立において、講義の受け方は非常に重要です。とくに私の場合は、経済学も政策学も初めての学びです。先生方にご相談しながらアーカイブ視聴やレクチャーノートで自学するほか、本務に支障のない夕方からの講義や短期集中講義を柔軟に組み合わせることで、本務と学業のバランスを保っています。一方で、社会人学生が学びやすいよう昼休憩の時間や土曜日にゼミ開催を調整・協力してくださる指導教員や院生仲間の配慮にはいつも本当に助けられています。
キャンパスへ足を運ぶ際は、指導教員との対面での打ち合わせや、院生仲間とのディスカッションに集中します。東京と大阪という物理的な距離はありますが、むしろ「OSIPPに行けば、分野や国籍、立場、世代を超えて議論できる」という醍醐味が、今の私の大きなモチベーションになっています。その中で、Facebookやメールなどで届くOSIPPからの発信にもいつも励まされています。画面越しに流れてくる先生方や院生の論文発表のニュース、活気ある研究会、そして楽しそうなパーティーなどOSIPPの熱量が伝わってきます。
専門外のためゼロからのスタートですが、周囲に助けてもらいながら少しずつ学んでいます。院生室には、共に課題を解決し合えるピア・メンターのような仲間が揃っており、これまでの院生生活の中で今が一番楽しいかもしれません。ぜひ、お待ちしています。
