2018.11.16
【研究紹介:赤井伸郎教授】
人口減少時代における持続可能で健全な政府の行財政運営と豊かな社会の両立
現在取り組んでおられる研究内容についてお聞かせください:
地方自治体の健全性をガバナンスする制度の評価に関する研究です。
「地方財政健全化とガバナンスの経済学」という書籍を、今年度中に出版予定です。
なぜこの研究に取り組むことになったのですか:
夕張市が、収入を上回る過剰な支出を行い、返済できない借金を抱えて破綻しました。それ以来、地方自治体への不安が広がり、国が、地方自治体の健全性を監視する仕組みを作り、今年で10年となります。この仕組みがどのような効果を及ぼしたのか、
その仕組みに改善の余地はないのかを調べることは、社会的意義が高いと考えました。
この研究分野の魅力や面白いところ、最新の研究動向を教えてください:
地方自治体は、社会経済環境においても、財政規模においても、東京・大阪のような大都市から過疎の村まで、大きな幅があります。その幅に柔軟に対応でき、また一方で、説明責任を果たせる客観的な制度が求められます。その制度作りには、高度なインセンティブ理論に基づく契約作りの知識が必要となります。これまでの研究の知識が活かせると考えました。地方自治体の行動をモデル化した理論や、実証の分析が進んでいます。
大学院でこの分野を研究していくためには、どういった勉強をしておく必要があると思われますか:
応用分野であるので、ミクロの経済理論からマクロの経済理論、実証分析の手法、さらには、行財政制度の詳細を理解する能力など、幅広い知識の蓄積が必要です。
最後に、先生の指導スタイルや指導学生の研究テーマを教えてください:
個別指導に加え、ゼミでのディスカッションが主です。合宿を行うなど、大学院生同士の間での切磋琢磨を通じて能力を高めあう場所作りを意識して指導をしています。ゼミ合宿で、教員と学生の間はもちろん、学生同士の間でのお互いの気持ちを伝え合う場所作りも大事だと思います。現在、指導学生は、地方自治体行動(歳出・歳入)理論・実証分析、国と地方の行財政関係のあり方に関する理論・実証分析を行っています。
(OSIPP博士前期課程 塚越 和)
教授 赤井伸郎
学位 経済学博士(大阪大学)
専門分野:公共経済学、財政学、政府のガバナンス論
代表的な業績:
『行政組織とガバナンスの経済学―官民分担と統治システムを考える―』(単著)
有斐閣、2006年11月刊行
『交通インフラとガバナンスの経済学- 空港・港湾・地方有料道路の財政分析-』(単著)有斐閣、2010年7月刊行
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