Eventsセミナー・シンポジウム

移行期正義に関するセミナーを開催

1月22日、オランダ・グローニンゲン大学のクリストファー・ラモント氏と米ポモナ大学のミテク・ブドジンスキー氏をお招きし、「革命的正義か部分的正義か―リビアとチュニジアの移行期正義を理解する」と題したセミナーを開催しました。

本セミナーでは、「アラブの春」革命後のチュニジアにおける輝かしい成功とリビアの失敗の例を用いて、移行期正義(Transitional Justice)を題材に両国での革命の類似点と相違点ついての議論がなされました。両氏によれば、チュニジアとリビアの事例には、独裁者の追放、説明責任への強い要求、前政治体制への不信、前政権下でのイスラム原理主義者の抑圧などの点で共通点がありました。しかし、チュニジアでの抗議活動が比較的平和的なものにとどまり政府機関が革命後も維持されたのに対し、リビアでは悲惨な紛争が長期化して政府機関が消滅しており、このことが移行期正義のあり方にも相違をもたらす結果となりました。

ラモント氏は、チュニジアの移行期正義のあり方を「部分的正義」と位置づけ、かつての支配層の粛清が事実上の恩赦によって制限され、さらにイスラム系与党による民主派への広範囲に及ぶ政治的な譲歩や、汚職に関する説明責任の制限が行われたと説明しました。一方でブドジンスキー氏は、失敗例とされるリビアの移行期正義のあり方を「革命的正義」と位置づけ、勝者である反体制派がカダフィー政権派を完全に追放し、法や裁判、法の適正手続きを経ずに勝者が定めた正義による処罰が行われたと指摘しました。最後に両氏は、「部分的正義は移行をより促進するのに対し、革命的正義は移行を阻害する」とし、「政府機関の維持が移行期正義における鍵となる」と結論付けました。

(OSIPP博士前期課程 栗山緋都美)

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