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教員紹介:菊田恭輔 准教授

OSIPP政治系教員である菊田恭輔准教授にインタビューを行った。菊田先生はテキサス大学オースティン校で政治学の博士学位を取得し、2019年8月から国際公共政策研究科の准教授として着任した。専門はデータ分析を用いた紛争研究や因果推論で、「国際関係論」や「国際関係論の理論と方法」などの講義で教鞭をとっている。

 

 

いま取り組んでおられる研究内容について:
国内紛争のデータ分析を中心に研究しています。トピックとしての「紛争」、方法論としての「因果推論」を組み合わせた分析となります。現在は、機械学習を用いて紛争地域をマッピングして点の情報を面(エリア、ゾーン)で捉える研究や、海賊行為と陸上での武力行為が実質的に選択されていることに着目し、陸上と海上の気候データを交えて研究したりしています。今まで書いた論文では、スリランカにおける津波の被害が紛争の位置に与えた影響をデータ分析したものや、1996年に始まり多くの国が参加したコンゴ民主共和国の内戦が森林破壊に与えた影響について、統合制御法(synthetic control method)を用いて分析した論文などがあります。このように、「紛争」に関する情報を「データ分析」により研究しています。

 

なぜこの研究に取り組むことになりましたか:
一橋大学時代の出会いがきっかけとなりました。学部時代は政治哲学などを学んでいましたが、ダートマス大学の堀内勇作先生の講演に出席し、ランチを一緒にする中で「こんな世界があるんだ」とデータ分析の面白さを感じました。博士過程ではテキサス大学オースティン校で学び、データ分析手法を用いて紛争などを研究する指導教官のもとで学び、現在の研究に至っています。

 

この分野の魅力、面白さ、最新の研究動向について聞かせてください:
データ分析を用いた研究の、透明性が高く(transparent)、民主主義的なところに魅力があります。方法論が確立されているため、研究手法と技術を覚えれば誰でもきちんと評価してもらえます。また、全体を俯瞰して研究できる面白さもあります。限られた事例に焦点を絞るのも大切なのですが、都合のいい事例だけが集まる可能性もあり、それを回避するために一定の数を取り扱うデータ分析を用いて状況を俯瞰した研究ができます。あとは、単純に楽しいと思えるところでしょうか。個人的にはデータ分析は登山に似ていると思っています(笑)。ある程度終わるまでどのような結果が出てくるか分からず、頑張ってデータを揃え、様々な方法論を検討した末に面白いものを発見する喜びがあります。自分が考えたものとはまったく異なる結果が出てくると「えっ、なんでだろう」とパズルが生まれ、分析していく。その一連のプロセスが非常に面白いです。

 

大学院でこの分野を研究していくためには、どういった勉強をしておく必要がありますか:
紛争研究に興味がある人は、ウォルター論文(Walter, Barbara F. 2013. “Bargaining Failures and Civil War.” Domestic Political Violence and Civil War 1 (1): 243-261)などはお勧めですし、国際関係論を学ぶならジェフリー・A・フリーデンらによって書かれた『World Politics』は必読書と言えるでしょう。データ分析を研究したい場合はまずは『Mastering ‘Metrics』をお勧めします。

(OSIPP博士後期課程 田中翔)
インタビュー実施2019年 9月


准教授 菊田恭輔(きくた きょうすけ)
学位 博士(政治学)(テキサス大学オースティン校)
専門分野:国際関係論、紛争研究、データ分析
研究テーマ:国内紛争、因果推論、気候変動、交渉理論、GISデータ分析
代表的な業績:
Kikuta, Kyosuke. Forthcoming in 2020. “The Environmental Costs of Civil War: A Synthetic Comparison of the Congolese Forests with and without the Great War of Africa.” Journal of Politics.