教員紹介:二杉健斗 准教授
2020.12.1
教員紹介:二杉健斗 准教授
OSIPP法政系教員である 二杉健斗 准教授にインタビューを行いました。二杉先生は京都大学で法学の博士号を取られたあと、岡山大学大学院社会文化科学研究科講師を経て、2020年10月にOSIPP准教授として着任されました。
現在取り組んでおられる研究内容についてお聞かせください:
企業などの非伝統的な国際法主体について研究しています。詳しく言えば、企業などが海外進出した際に、進出先の国家との間で政治的なトラブルが生じ、相手国の裁判所で公平な判断が期待できない場合、企業本国との間で一定の条約が結ばれていれば、企業が国際的な裁判所で訴えることができます。これを投資条約仲裁といいます。私が研究しているのはそういった分野です。
この研究に取り組むことになったきっかけを教えてください:
大学院修士課程に進学した時には、外交的保護という、海外で自国民が被害を受けた場合にその国籍国が出てきて相手国に賠償請求をする伝統的な制度について研究しようと考えていたのですが、この制度については、近年のケースが少ないという問題がありました。そのときに、指導教官に紹介された投資条約仲裁の模擬裁判の大会を通じてこの分野を学び、非常に新しい分野でなおかつ、ケースが多いこの分野に魅力を感じたのがきっかけです。
この分野の魅力、面白さはどんなところですか:
国際法という国家と国家との間の関係が基本である法体系の中で、企業や私人といった非伝統的な主体が登場することに面白さがあります。そのときに、どういった権利を企業が保持しているのか、国家間の係争とは異なる法的論理が働くのかといったことが、まだまだ未開拓であるので、そこを解き明かしていくのも大きな魅力です。
大学院でこの分野を研究していくためには、どういった勉強をしておく必要があると思われますか:
国際投資法の勉強には、いくつかの分野を押さえておく必要があります。一つは国際法全体を学部生の時期に体系的に勉強しておくことです。次に、国際投資法においては、企業が相手国を訴える手続きが、国内法に準拠したものとなるか、それと近いものである場合があります。従って、国内法におけるの国際民事手続法等を勉強しておく必要もあります。国際投資法は様々な法領域がミックスされた分野であるので、バランスよく勉強することが大切です。
最後に、先生の指導スタイルをお聞かせください:
国際法も実際は国内法と同じく、厳格な法の論理が存在しています。そこを理解することは必要です。その一方で、国際法は国際政治の状況に大きく左右されることがしばしばありますので、柔軟な理解も大切です。その両面をしっかり指導していきたいと思っています。
(OSIPP博士後期課程 内輪雅史)
インタビュー実施2020年10月
准教授 二杉健斗(にすぎけんと)
学位:博士(法学)(京都大学)
研究テーマ:国際投資法、国際紛争処理
専門分野:国際法
<代表的な業績>
・二杉健斗「投資条約仲裁における投資家の国家責任追及権の根拠と性質 : 非金銭的救済を素材として」『国際法外交雑誌』117巻2号(2018年)337-364頁
・二杉健斗「投資条約の解釈統制と投資家の「客観的」国際法主体性(1-5・完)」『法学論叢』183巻5号(2018年)127-139頁・184巻1号(同)115-136頁・同5号(2019年)69-89頁・同2号(同)45-59頁・同5号(同)35-67頁
<参画している研究プロジェクト>
・「国際法における「帰属」の遍在性に関する研究」日本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究B(課題番号20H01425、研究代表者:岡田陽平(神戸大学国際協力研究科准教授))
・「宇宙の商業利用がもたらす「宇宙法」の変容と課題--新時代のルール形成に向けて」日本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究B(課題番号20H01438、研究代表者:笹岡愛美(横浜国立大学大学院国際社会科学研究員准教授))