著書・論文

3月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の先月の研究業績をご紹介します。

・小原美紀先生

・木戸衛一先生

・室岡健志先生

 

 

Miki Kohara coauthored with Bipasha Maity

“The Impact of Work-Life Balance Policies on the Time allocation and Fertility Preference of Japanese Women” Journal of the Japanese and International Economies, vol. 60 https://doi.org/10.1016/j.jjie.2021.101134  (June 2021) (査読有)

Abstract:We study the impacts of family-friendly leave policies called work-life balance policies on women’s time-use in Japan. These policies raise women’s share of time spent in paid employment. However, share of time in domestic chores does not decline completely to compensate for the increase in time spent working for women. This implies a “double burden” of work for women. No impact of the policies is found on willingness of having a child for women or on time allocation of men.

 

小原美紀 coauthored with 塗師本彩、黒川博文

「就職支援プログラムと若年失業者のメンタルヘルス」『日本経済研究』(査読有) 塗師本彩、小原美紀、黒川博文(共著) https://www.jcer.or.jp/publications/early.html(2020)

概要:日本で公的に行われている就職支援プログラムは本当に成果を上げているのだろうか。本論文では、これまで一度も行われてこなかった国の就職支援プログラムについて、実在の公的機関で効果検証を行った。注目したのは、大阪わかものハローワークで行われている若年求職者向けの2週間の就職支援プログラム(厚生労働省)である。プログラム参加者を1年間にわたり追跡して得たデータを分析した結果、対象とした就職支援プログラムへの参加者は、就職意欲が高まるだけでなく、若年失業者で近年深刻な問題となっている精神的健康状態も悪化しないか、たとえばうつ症状については改善することがわかった。精神的な健康状態の改善効果はプログラム終了後も続き、数か月後の就職率も高まる。公的な若年就業支援策は、就業だけでなく健康状態の改善という長期的で副次的な効果を持つと言える。

 

小原美紀 coauthored with 沈燕妮

「失業給付の効果分析」『日本労働研究雑誌』726 号 pp.35-46  https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2021/01/index.html(2021)

概要:失業給付制度は求職者がスムーズに再就職できることを目指したものであるが、実際には、給付の存在やその水準が求職者の求職意欲を阻害し再就業率を低下させることが多くの国で報告されている。近年の研究では、再就職率だけでなく再就職後の厚生ロスにつながる可能性や、経済的な厚生だけでなく健康の悪化につながる可能性も議論されている。さらに、行政データを使った効果測定や、ランダム化比較試験を使った因果効果の検証も行われている。本論文では、これら最新の学術研究成果をサーベイし、様々な理由で分析が十分に行われていない日本について、必要とされている統計分析の課題について議論している。

 

木戸衛一

『核と放射線の現代史』若尾祐司との共編著 昭和堂(2021年)

概要:福島第一原発の過酷事故から10年が経過し、人文・社会科学の特に外国研究で問題関心が薄れている「核」の軍事利用・平時利用の暴力性について、欧米のさまざまな歴史的事例を比較検証した。

 

木戸衛一

「日本学術会議会員任命拒否問題からみえるこの国の政治と教育」『まなぶ』773号(2021年2月)

概要:日本学術会議の新会員6名の任命を総理大臣が拒否したことの違憲性・違法性を明らかにするとともに、哲学者の三木清が「学生の知能低下」(『文藝春秋』1937年5月)と警鐘を鳴らした状況認識のアクチュアリティーを指摘した。

 

小原美紀

「労働経済学」 新版『進化する経済学の実証分析』 経済セミナ—編集部、日本評論社、pp.141-149(2020)

概要:この本は、大学で経済学を学び始めた人や、学術研究を専門とはしないが研究成果の理解が不可欠な政策担当者などを読者の対象として、経済学分野での研究(とくに実証分析)に興味を持たせることを目的として書かれている。小原の担当章では、労働経済学分野の研究で近年取り上げられることの多い研究テーマについて、研究傾向を整理し、どのような研究が今後行われる必要があるか、そのために何を学ばなければならないかを議論した。

 

室岡健志

行動経済学 人の心理を組み入れた理論 連載第10回 不確実性下の選択(5)確率加重の発展と応用 『経済セミナー』No.719、2020年4・5月号(3月発行)pp.78-84

概要:今回は、Kahneman and Tversky (1979, Econometrica)で提唱されたプロスペクト理論のうち、確率加重についての理論的な発展およびファイナンスや保険などへの応用を紹介する。

 

小原美紀 coauthored with 阿部修人、稲倉典子

「家計内サービス生産関数及び時間制約に関する一考察」一橋大学経済社会リスク研究機構DP21-3
http://risk.ier.hit-u.ac.jp/Japanese/pdf/dp21-3_rcesr.pdf (2021)

概要:本論文では余暇目的の時間・金銭投入に関する独自調査に基づき、家計内生産関数の形状を推計している。先行研究の多くは外部労働市場における賃金情報を用いており、財と時間の間の代替の弾力性は1より大きく、強い代替性があることが報告されている。しかしこの場合、専業主婦など、外部労働市場での時間投入がない人の推計が著しく困難となる。本論文では、時間・財投入の情報から弾力性が1より大きいか、小さいかを識別する関係式を導出し、日本におけるデータに適用した。その結果、先行研究と異なり、時間と財投入の間には強い代替性はなく、十分な時間を余暇に割くことができない人は財投入も少なくなる傾向があるという結果を得た。

 

※記載順:論文→著書→その他の記事→ディスカッションペーパー(DP) となっています。