セミナー・シンポジウム

空港・空路を用いた地域活性化セミナー2024 開催

空港・空路を用いた地域活性化セミナー2024


2024年1月22日(月)に、OSIPP赤井研究室の主催で「空港・空路を用いた地域活性化セミナー2024」が行われた。赤井ゼミの学部生に加え、OSIPPの学生や他大学の教員・学生も含め約40人が参加した。
(写真:左から本田俊介氏・岡田信一郎氏・花田祥一氏)

 

赤井研究室ゼミ生による発表

初めに、赤井研究室に所属する学部生による空港活性化政策の提言があった。国が全空港への空港コンセッション(施設の所有権は公的機関に残したまま、運営を民間事業者に任せる事業形態[詳細])の導入を目指していることを背景に、空港コンセッション導入の効果を分析し、その上でコンセッションの普及促進に必要な施策を発表した。

分析結果より、以下の2つが明らかになった。まず、空港コンセッションの導入が空港の経営効率性を改善する(路線数・便数・収益の増加)ことである。次に、空港コンセッションの導入には①ノウハウの不足、②資金の不足、③マッチングの不足という3つの課題が存在することである。以上を踏まえ、これらの課題に取り組む施策として空港コンセッションを推進する会議の開催や交付金の付与、情報を共有するプラットフォームの構築を提言した。

花田祥一氏(和歌山県港湾空港局局長)

続いて、空港を核とした地域活性化の在り方について和歌山県港湾空港局局長の花田祥一氏、株式会社南紀白浜エアポート(’19年4月に民営化した南紀白浜空港の空港運営会社)社長の岡田信一郎氏、株式会社J-AIR(日本航空グループ)社長である本田俊介氏が各局・各社の取り組みを述べた。花田氏は、そもそも地方空港は支出を既に切り詰めており、収支の改善余地が小さいことを指摘。例えば駐車場の有料化・料金値上げで赤字を改善することは可能だが、必ずしもそうした有料化・値上げ策が県民のためにならないのではないかと主張した。その上で、コンセッションを導入すれば、役所間の調整がスムーズであるといった官の強みと、本来の目的ではない活動にも手を伸ばせる等の民の強みを同時に活かせると述べた。

岡田氏は、南紀白浜エアポートが空港型地方創生をコンセプトに地域活性化に取り組んでいることを強調。認知度向上を目指して地域をPRするだけにとどまらず、地域の旅行事業を支援するなど「人が人を呼ぶ」ような空港経営を行っている。また、コンセッションのメリットをアピールした。実際に同空港では和歌山県港湾空港局と連携することで年度あたりの旅客数が10年前と比較して大幅に伸びているとのことであった。その結果として白浜町の平均所得が上昇傾向にあるなど、地域の活性化に貢献しうることを示唆した。

本田俊介氏(株式会社J-AIR社長)

本田氏は、J-AIRがその地域の「定住人口」や観光で一度行くだけの「交流人口」を超え、地域と多様な形でつながりを持つ「関係人口」の増加を目指していると話した。そのために、農泊の拡大や集落での民泊体験に取り組んでいる。また離島や山岳地帯での観光の手助けとして、シーグライダーを運航していることなども紹介した。

最後にパネル討論が行われた。討論では、地域活性化やインバウンド誘致のために空港・空路に求められることが話し合われた。岡田氏は、海外からの旅行客が来日時に東京を訪れる可能性が高いことに触れた。その上で、旅行客がもう1か所どこかの地方に行きたいと考えたとき、南紀を選んでもらえることが大事だと述べた。また、本田氏は岩手県盛岡市が2023年1月のニューヨークタイムズで”今年行くべき世界の52か所”に選ばれたことを挙げた。海外からの旅行者は、ありのままの日本人の生活に関心があって日本を訪れること強調し、地方を訪れる目的を作ることの必要性を説いた。その上で、地方の入り口として空港が果たす役割について考えなければならないと述べた。

日本が人口減少に直面する中で、地域創生やインバウンドの誘致促進は重要な課題である。今回のセミナーを通して、空港・空路が課題の解決に十分に寄与する主体であり、官との連携がより力強い助けとなるだろうということが共有された。

 

私はふらっと旅に出ることが好きだが、恥ずかしながら空港は旅行の手段としか捉えていなかった。空港は、様々な取り組みを通してその地域の魅力を発信している。その取り組みに自分も参加することでまた訪問してみたいと感じ、そして周りの人に魅力を伝えることで地域の活性化につながるのだと思った

(OSIPP博士前期課程 久保知生)