セミナー・シンポジウム

安藤重実氏(外務省総合外交政策局国連企画調整課長)特別講義
「日本の国連外交」

2022年11月17日、安藤重実 外務省総合外交政策局国連企画調整課長による「日本の国連外交」と題した特別講義が開催された。本講義は、OSIPP教授である星野俊也先生が担当する授業「政治の世界」の一環として、またESGインテグレーション研究教育センターとの連携の下、法学部及びOSIPPの学生を対象に実施された。(写真:講演中の安藤氏)

 

 

講演の様子

まず、安藤氏は世界の大きな流れについて「正統性と力のバランス」という観点から話した。また、「政治の世界」の具体例として在インドネシア日本国大使館での参事官時代や、在米国日本国大使館での参事官としての経験を紹介した後、本講義のメインテーマである国連に関する基礎知識や日本としての国連に対する基本方針について説明した。

次に、ウクライナ情勢に関する問いを参加者に投げかけ、その問いに対しての賛否と理由を説明してもらうなど、学生からも意見を発信し議論する機会を設けた。さらに、ウクライナ情勢を巡る国連決議や国際的な投票においては、世界が一致団結してロシアの行動を非難することの難しさについても語った。例えば、アフリカや中東の国々は「自分たちの地域では多数の死者が出ていてもこれまで対応されてこなかった」や「パレスチナ問題には対応していない」など、欧米諸国による「二重の基準」を批判していることを紹介し、また、他国の問題よりも食糧問題や気候変動といった自国の深刻な問題を最優先にせざるを得ない国々があることも述べた。

講演終了後に学生からの質問に答える安藤氏

最後に安藤氏は、不安定な時代だからこそチャンスもたくさんあると述べ、「チャンスにはドアノブがない。ある日、数ある扉の中の1つが開いていて、そこに自ら飛び込むかどうかだ」という言葉を紹介しつつ、チャンスがあれば前向きに取り組んでほしいと学生に向けてメッセージを送った。

質疑応答では参加者から多くの質問が寄せられ、人脈の重要性、外務省でのキャリアについて、学問における国際法と実務における国際法の違い、女性の活躍など多岐にわたるトピックで議論が盛り上がった。講義終了後も安藤氏を囲んで熱心に質問をする学生たちの姿があった。

 

本講義は、安藤氏の経験に基づく実務的な側面のみならず、ヘンリー・キッシンジャーやベネディクト・アンダーソンの著書が紹介されるなど、学問的な知見も合わせた多層的な内容であった。さらに、インドネシアの宗教について触れられた際には、コンビニにおけるお酒の取り扱いを取り上げ、具体的で身近な例を用いて説明するなど、受講生の多くを占める学部1年次の学生にも分かりやすいものであった。安藤氏の双方向的な講義スタイルと学生の積極的な参加が相まって大変活発で有意義な講義となった。

 (OSIPP博士後期課程 平野歩)