2023.1.5
OSIPP基幹講座教員の12月の研究業績をご紹介します。
・前川和歌子 先生
・赤井伸郎 先生
・和仁健太郎 先生
Wakako Maekawa(論文)
“Verification of Peace Accords and Military Expenditures in Post-Conflict Societies”
Defence and Peace Economics(査読有)
Doi: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10242694.2022.2158648
Abstract:Why is it that some governments ending a civil war in a negotiated settlement succeed in reducing military spending while others fail? Civil wars ending in peace agreements result in relatively low military expenditures; however, not all governments succeed in the reduction. I argue that implementing a third-party verification mechanism of peace accords helps reduce military spending in post-conflict societies because the verification mechanism facilitates the peace accord implementation by enabling reciprocal implementation and by increasing the cost of noncompliance through active information flow. Implementation of peace agreements reduces threats posed by both former and outside rebel groups. This makes the government decrease the military expenditure allocated to appease internal security threats. I tested this argument using 32 civil wars with a comprehensive peace agreement between 1992 and 2011. The results indicate that initiating a verification mechanism leads to lower military spending.
赤井伸郎 coauthored with 石川達哉(論文)
「新型コロナウイルスが地方公共団体の歳入・歳出に与えた影響―コロナ禍において地方公共団体の収支は悪化したのか?―」『フィナンシャルレビュー』令和4年(2022年)第3号(通巻第149号)(2022年11月発行)
財務総合政策研究所 財務省 https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r149/r149_02.pdf
概要:新型コロナウイルスが地方公共団体の歳入・歳出に与えた影響の実態を詳細に把握したものである。新型コロナ対応で地方自治体の歳出は増えたものの、その歳出の殆どが国からの交付金で賄われたことから「収支は黒字化した自治体が多い」という、意外な事実が明らかにされている。
赤井伸郎 coauthored with 米岡秀眞(論文)
「知事の在職年数が地方歳出に及ぼす影響に関する実証分析―知事の属性及び就任時期の違いに着目して―」『フィナンシャルレビュー』令和4年(2022年)第3号(通巻第149号)(2022年11月発行)
財務総合政策研究所 財務省 https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r149/r149_06.pdf
概要:政治家の在職年数と財政運営における関係性については、これまで先行研究により多くの議論が行われてきたが、正負いずれの影響を及ぼしているかについては定まっていない。本研究では、1975 年から 2017 年までの都道府県パネルデータを用いて、知事の在職年数と地方歳出との関係性を分析し、①2000年頃を境として、地方歳出と知事の在職年数との関係性が異なる可能性があること、②そうした関係性が知事の属性及び就任時期によっても異なる可能性があることが明らかにされている。
赤井伸郎 coauthored with 金坂成通・倉本宜史(論文)
「汚職発覚による歳出への影響の検証―都道府県別データによる実証分析―」『フィナンシャルレビュー』
令和4年(2022年)第3号(通巻第149号)(2022年11月発行)財務総合政策研究所 財務省
https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r149/r149_07.pdf
概要:汚職は、予算権限を持った個人主体が、ある特定の団体に利益(資金)を誘導・配分する代わりに、個人での利益を得る仕組みであり、公益とは乖離し、社会全体での効率的な資源配分を歪める要因となる。例えば、新たな資金を配分する場合には歳出総額は拡大し、また、資金配分が非効率になる場合には特定分野の資金が拡大し、歳出の無駄が発現する。本研究は、汚職の存在と歳出の増加との関係について、汚職は発覚するまで存在がわからないという点に注意しながら分析を行い、汚職の発覚後に歳出を抑える可能性がある事が明らかにされている。
赤井伸郎 coauthored with 山下耕治・赤井伸郎・福田健一郎・関隆宏(論文)
「老朽化と料金体系が水道料金に与える影響」『フィナンシャルレビュー』令和4年(2022年)第3号
(通巻第149号)(2022年11月発行)財務総合政策研究所 財務省 https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r149/r149_09.pdf
概要:本研究では、水道管路の老朽化や人口減少の進行と、および口径別か用途別かという料金体系の違いは、水道料金の格差を生む要因であるのかについて分析している。その結果、①老朽化した水道管路の割合が高い事業体ほど、家事用の水道料金は有意に高くなること、②口径別料金体系を採用している事業体では、用途別の事業体と比較して、家事用の水道料金は高い水準にあること、③口径別の事業体では、老朽化した管路の割合が高いほど水道料金が高いことが明らかにされている。地方公営企業である水道事業は独立採算制が原則であり、原価に見合った料金設定・改定が求められている。用途別の料金体系は、施設の老朽化や事業の収支を見据えた適正な水道料金の設定・改定を阻む制度的要因になっていると思われ、持続可能性の観点からは口径別料金体系の導入が望まれる。
和仁健太郎(論文)
「ロシアによるウクライナ軍事侵攻の合法性と国際社会の対応」
『国際問題』710号(2022年12月)15-24頁 https://www2.jiia.or.jp/BOOK/
概要:本稿は、2022年2月24日に開始されたロシアのウクライナ軍事侵攻とそれに対する国際社会の対応について、国際法の観点から検討する。第1に、ロシアの軍事侵攻について武力行使の規制に関する国際法の観点から検討し、ロシアが援用していると考えられる武力行使正当化事由、すなわち個別的自衛権、人道的干渉および在外国民保護のいずれによってもロシアの軍事侵攻は国際法上正当化され得ないことを明らかにする。第2に、諸国がウクライナに与えている軍事援助について、交戦国への軍事援助は、その交戦国が合法的に武力を行使する国である場合には集団的自衛権により正当化されるが、武力行使の合法・違法が国連安保理によって有権的に認定されていない状況においては、他方交戦国によって違法な武力行使または武力攻撃と見なされる可能性を排除できないことを指摘し、そのような状況において中立法が果たし得る機能について論ずる。
赤井伸郎(その他の記事)
「<特集>地方自治体行動の実証分析―地方自治体の財政運営の検証―赤井伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授 責任編集」『フィナンシャルレビュー』令和4年(2022年)第3号(通巻第149号)
(2022年11月発行)財務総合政策研究所 財務省 https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/fr149.html
概要:本特集は、地方財政の効率的・効果的な財政運営方法および、それを促すガバナンス制度を検討し、実際の運営に役立つ情報提供をするため、ある事象が地方自治体の行動に与えた影響を分析した論文8本を4つのテーマに分類して納めた特集号である。4つのテーマとは、①災害、②ガバナンス制度、③政治・汚職、④幅広自治体活動(連携・公営企業)である。
*論文に関しては、特に記載のないものは「査読なし」です。