【院生紹介】白石優希さん(OSIPP博士前期課程)
2025.6.13

【院生紹介】白石優希さん(OSIPP博士前期課程)
今回は、OSIPP博士前期課程に所属する白石優希さん(M2)にインタビューしました。白石さんは、経済学の分野で交通行動の意思決定に関する研究を進める一方で、修士1年の頃から「超域イノベーション博士課程プログラム」にも参加しています。このインタビューでは、白石さんの研究内容に加え、OSIPPからの履修者が比較的少ない超域のプログラムの実態について、詳しくお話を伺いました。(写真:白石優希さん)
交通をめぐる意思決定に関心を持ったきっかけ
――白石さんは、どのような研究に取り組んでいるのですか?
もともと、交通渋滞をどうすれば解消できるかに興味があって、そこから「人々の移動手段を自家用車から公共交通にどうシフトさせるか」という問いに関心を持つようになりました。学部時代には、地元のバス会社に協力いただき、移動手段を選ぶときにどんな要素が意思決定に影響を与えているのかを調べました。大学院では、交通行動の意思決定について、経済学や統計学の視点を取り入れて分析を進めています。
超域ってどんなプログラム?
――「超域イノベーション博士課程プログラム」(以下、超域)とは、どういったものなのでしょうか?
超域は、社会と知の統合によってイノベーションを起こすことができる人材を育成することを目的とした、修士・博士の5年一貫の教育プログラムです。
プログラムでは、大きく分けて「授業」「経済的支援」「教員によるサポート」の3つが提供されます。授業は14単位の必修科目があり、体系的な講義というよりは、最前線で活躍する実務家の方々から直接お話を聞くスタイルが多いです。例えば環境系の授業では、企業で生態系の実地調査を行っている方から現場での体験談を聞くことができ、とても刺激になります。授業はディスカッション中心で、発表する機会も多く、受講生同士が自然と打ち解けられる雰囲気があります。
本履修生には、月6〜9万円の給付型奨学金があります。さらに、授業や超域の活動にかかる費用も支援してもらえます。博士後期課程の学生にはSPRINGへの採用枠や授業料免除などがあります。
この他にも、履修者1人につき2人の担当教員がつき、半年に1回、約30分の面談が行われます。事前に提出する自己評価シートをもとに、この半年間の振り返りや今後の課題について話すことができ、自分自身の学びを見つめ直す貴重な時間になっています。
応募した理由は?
――どうして超域を履修しようと思ったのですか?
「意義のある研究課題を設定し、社会課題に関わる多様なセクターと積極的にコミュニケーションをとることができる人になりたい」という思いがあり、そのビジョンを実現するために超域への参加を決めました。
具体的に言うと、1つ目の理由は、研究テーマに対して多角的な視点を持ちたかったからです。私の研究テーマである交通については、経済学だけでなく工学などの分野でも議論されています。学部時代からこのテーマを一貫して追ってきたことで専門性は深まりましたが、視点が偏ってしまうのではという不安もありました。他分野ではこのテーマがどう考えられているのかを知ることで、もっと客観的に見られるようになりたいと思いました。
2つ目は、論理的に説明し、自分の意見を正確に伝える力を身につけたかったからです。将来的に政策立案に関わる仕事がしたいと考えており、そのためにはいろいろな立場の人と対話し、自分の考えをきちんと説明する力が必要です。超域は経済学の前提が共有されていない環境なので、わかりやすく伝える力を鍛えるにはぴったりだと思いました。
履修してみて感じたこと
――実際に履修してみて、いかがですか?
「履修して本当によかった」、この一言に尽きます。私自身は経済的支援以上に、他研究科の学生との交流に魅力を感じて超域に参加しました。そして、実際にたくさんのかけがえのない友人ができました。14単位の授業を一緒に受ける仲間とは自然と仲良くなり、昼休みに一緒にご飯を食べながら研究の話をすることもよくあります。文化人類学や医療分野の話など、OSIPPでは触れられないような分野の話も聞けて、毎回新しい発見があります。
さらに、活動費支援もあるので専門が異なる履修生同士で「一緒に研究してみよう!」という話が出ることもよくあります。まさに、境域を超えて新しいものが生まれていく瞬間に立ち会っていることを実感します。
選抜について知りたい!
――選抜のプロセスについて教えてください。
私が出願した年は、6月末に研究計画書・志望理由書・小論文形式の課題を提出しました。書類審査の通過後、Zoomでの口頭試問がありました。試問では、自分の研究計画について20分ほど発表し、その後30分ほど質疑応答が行われました。ちょうど春夏学期のテスト期間と重なっていたので、準備はとても大変でした。特に小論文は、答えが1つに決まらない問いに対して自分の意見を論じる内容で、思考力が問われるものでした。また、指導教員からの履修許可も必要だったため、6月はほぼ出願準備に費やしていました。出願スケジュールや提出書類は年度によって変わる可能性があるので、履修を考えている人は必ず公式ホームページなどで最新情報を確認してください!
OSIPPの学生へのメッセージ
――超域を履修しようか迷っているOSIPPの学生に、メッセージをお願いします。

OSIPPの学生と神戸港にて
特にOSIPPの1年生は授業が多くて忙しいので、修了要件を超えて授業を取らなければならない超域のようなプログラムは、ハードルが高く感じられるかもしれません。でも、私は超域を履修して本当に良かったと心から思っています。経済学という自分の専門から一歩外に出て、他の分野の人と対話することで、自分の研究を相対的に見つめ直すきっかけになりました。自分の強みや立ち位置を再認識できたことは、何よりの成果だと思っています。
超域は本当に面白くて楽しいです。「ちょっと興味ないかも」と思っている人にこそ、一度調べてみてほしいです!想像していた通りの負担で、想像以上の学びが得られます!!
(OSIPP博士後期課程 辻本篤輝)
▶白石さんの紹介ページ(超域プログラム)
https://www.cbi.osaka-u.ac.jp/member/yuki-shiraishi/
▶超域プログラムのホームページ
https://www.cbi.osaka-u.ac.jp/
https://itgp.osaka-u.ac.jp/program/leading_4324/