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【ダブル・ディグリー・プログラム】 山本葉月さん(OSIPP博士前期課程)

山本葉月さん(OSIPP博士前期課程)
-ダブル・ディグリー・プログラム受講生-


ダブル・ディグリー・プログラムでグローニンゲン大学(オランダ)に留学していた山本葉月さんの留学体験記を紹介します。(写真:誕生日パーティーの様子。上段右から二人目が山本さん。)

 

はじめに
 私は、2024年9月からダブル・ディグリー・プログラムの一環として、オランダのグローニンゲン大学に1年間留学しました。読んでくださっている方が、このプログラムで何を得る事ができるのか興味を持つきっかけになり、意思決定をするための役に立てれば幸いです。

 

なぜOSIPPで留学をするのか
 まず、留学をしたいと思った1番の理由は、異文化の中で暮らしてみたかったからです。OSIPPには留学生も

グローニンゲンの街並み

多く、また英語開講の授業も多いため、語学の勉強や異文化交流の経験をするために必ずしも留学する必要はないと思います。しかし、遠い外国に一人で暮らすといった経験は、実際にやってみないと想像の域を出ないなと常々思っていました。とはいえ大学院での学びはおろそかにしたくない、といった思いもありました。その点で、留学先のコースはResearch master(参考: https://www.rug.nl/masters/international-relations-research/?lang=en#!requirements)というコースで、研究者の育成に重きを置いており、PhDを目指す学生も多く、少人数でレベルの高い授業を受けられるといったものでした。このプログラムなら、異文化の中で生活をしてみることと、大学院で学びを深めることの両立ができると考え、留学を決めました。結果、多角的な視点で知識を広げながら、異文化の中で暮らす経験や新しい出会いを重ね、人生を豊かにし、人として成長することができたと思います。

 

オランダの生活

オランダ留学と聞くと、言語の心配をする方も居るかもしれません。結論としては、オランダ語を話せることは必須ではありません。オランダ人は1番ネイティブに近い非ネイティブと言われるくらい、誰もがとても流暢に英語を話すので、結局オランダ語は自己紹介レベルまでしか上達しませんでした。ただ、それでも問題ないくらい様々な国から人々が集まる国でした。例えば私はシェアハウスをしていたのですが(オランダは全国的に住宅不足かつ大学には寮がないため、自分で部屋を探す必要があり、何十件もメールを送ったりビデオコールをしたりたまに詐欺に遭いそうになったりと、住む場所を見つけるという最初のステップがめちゃくちゃ大変でした…)、イギリス人、マレーシア人、ナイジェリア人と一緒に住んでいました。クラスメイトはもちろん、こういった生活の中でも様々なバックグラウンドの人々と出会うことができます。
 

オランダ国王の誕生日を祝うKing’s day。みんなオレンジ色の服や小物を身につけます。

また、ヨーロッパと言えば、雨ばかりというイメージがありますが、全くもってその通りです。冬は大変寒く、それに加え16時には真っ暗になります。逆に夏は、22時頃まで明るく、曜日など関係無く15時頃から河川敷で乾杯するような陽気さでした。
 大学以外の場では、友だちの家でパーティーをしたりピクニックをしたり、行きつけのバーでよく飲んだりしていました。「楽しむこと」が得意な友だちにいつも感動していました。特にイベントへかける熱量は並外れており、クリスマスやオランダ国王の誕生日を祝うKing’s Dayなどは全力で楽しみ、一方ではメリハリをつけて勉強に励むといった生活は、とても楽しく充実していました。

 

グローニンゲン大学での学び
 学術的な観点で言えば、OSIPPとグローニンゲン大学のコースでは、同じInternational Relations(以下、IR)といってもその方法論や重きを置いている価値観が違うため、かなり違った角度で学びを深めることができました。OSIPPでは、私の場合は特にですが、実証研究を重要視しているのに対し、グローニンゲン大学では例えば人類学などの多様なバックグラウンドのもと、哲学的な議論や理論を重視した授業が多い印象でした。例えば、「IRにおける理論とは何か?」「そもそもこの理論はどのような方法論、社会の見方に基づいているか?」などについて、様々な論文をもとに議論しました。クラスメイトも、出身がバラバラなだけでなく、それぞれの興味も「きのこの生態をIRの研究にどう反映できるか」や「IRにおける存在論と仏教の関係性」など様々でした。そういった仲間と出会えたことも、留学の醍醐味になると思います。ちなみに授業はほぼ全てディスカッションがメインのため、論文を読んでいくことが前提でその上で自分の意見を発言しなければならず、とても苦労しました。ときには、月に100本以上論文を読むこともあり、毎日友だちと必死に論文を読んでいたのもよい思い出です。
 また先生との距離がとても近いことにも驚きました。例えば、ある授業の先生は毎週授業の終わりに「続きの議論はバーでやりましょう」と言って一緒にお酒を飲みながら議論の続きをしたり、ある先生は期末期間になると毎回クッキーを焼いてきてくれたりと、とてもフラットな関係で、新鮮すぎて最後まで慣れることはできませんでした(笑)。
 授業以外にも、シエラレオネのマケニ大学と共同で実施された定性研究の方法論のプログラムにも参加しました。OSIPPの海外インターンシップ助成金を活用し、実際にシエラレオネの村や自治体を訪れ、インタビューをさせてもらうなどとても有意義な経験を得る事ができました。この経験については詳しくは別の記事で書く予定なので、ぜひご覧頂けますと幸いです。

 

最後に
 留学をひとことでまとめると、本当に人に恵まれた1年間だったなと思います。留学前は家探しや書類の提出などに追われ、オランダについたものの初めの1~2ヶ月ほどはなかなか慣れることもできず帰りたいと毎日思っていましたが、最後にはまた戻ってきたいと思うほど素敵な友だちや思い出をつくることができました。大学院で留学することは、授業や研究も大変で、かつ就職活動なども重なり簡単なことではありませんが、その分濃い毎日を過ごすことができると思います。ダブル・ディグリー・プログラムに興味がある方はぜひ検討してみてください!