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2025年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会

2025年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会


2025年12月3〜5日、博士前期課程(修士)・博士後期課程(博士)論文の「2025年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会」がオンライン形式で開催された。

(写真:鈕奕昊さんの発表の様子)

 

口頭報告審査会では、修士号申請者34人と博士号申請者3人が発表を行い、博士論文進捗状況報告会では、博士号取得を目指す24人の学生が、それぞれの研究成果について報告した。発表時間は、博士前期課程の学生には20分、博士後期課程の学生には40分が振り当てられた。学位申請者は、審査委員の先生からのコメントを踏まえ、1月の論文最終提出に向けて加筆・修正を行う。

 

博士前期課程2年次である鈕奕昊さんは、「領域紛争にみる決定的期日の類型とその法的効果」と題した論文を発表した。この論文では、決定的期日(critical date)という国際法上の概念について、領域紛争に関する主要な判決の再検討と学説の整理を通じ、これまで一貫性が見えにくかった適用のあり方を明らかにすることを目的としている。その検証の結果、裁判所による決定的期日の運用は、「客観的日付型」と「紛争結晶化型」という二つの類型に整理できること、また、その法的効果は実体面と証拠面という二つの側面において有することを示した。発表後には、主査および副査の先生から論文構成についての指摘がなされ、決定的期日をめぐって活発な議論が行われた。

 

同じく博士前期課程2年次である原田嵩弘さんは、“Learning from Electoral Competition: How Politicians Adapt to Voter Preferences”と題した論文を発表した。報告では、選挙が政治家の行動を規律づけるメカニズムを、政治家が選挙を通じて有権者の選好を学習するという視点から説明した。これまでの研究が、有権者が政治家のタイプを見極める過程に焦点を当ててきたのに対し、政治家自身もまた、有権者が政策の成果を重視するのか、党派的立場を重視するのかといった点について、不確実性を抱えている点を強調した。その上で、政治家の私的利益を追求する行動は、競争的な選挙に直面することによって直接的に抑制するだけでなく、選挙を通じた有権者の選好に関する学習によっても抑えられることを示し、選挙競争が政治家の行動を規律づける2つの経路を示した。

 

今回の報告会も例年通りオンラインでの開催であったため、事前に設置されたZoomルームに自由に出入りすることができ、発表者以外の多くの学生も聴講していた。筆者自身は法学を専門としているが、他分野の報告を聴くことで、それぞれの研究がどのように構成され、どの点が評価の対象となるのかを具体的に知ることができた。また、来年に向けた自身の準備を考える上でも、有意義な機会となった。

(OSIPP博士前期課程 WANG Hsin Ni)