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【院生投稿】田中 翔さん(OSIPP 博士前期課程)

【院生投稿】田中 翔さん(OSIPP 博士前期課程)


「ザンビアのメヘバ難民定住地における現地調査」

本記事では、私が博士前期課程で実施した現地調査についての活動報告をします。 私は2017年8月3日から10月2日までの2ヶ月間、庇護国定住政策が難民の生計活動に与える影響を調査するため、ザンビア共和国へ渡航しました。主にメヘバ難民定住地に滞在し、100名を超える難民や関係者にインタビュー調査を行いました。

 ザンビアでは2013年から、ルワンダとアンゴラの難民を社会統合するためのプロジェクトが実施されています。私の修士論文は本プロジェクトを調査対象としています。

 少し、ここまでの経緯について書きます。私が難民問題を主題として設定したのは、大学院受験申し込みの2、3ヶ月前です。書きたい内容が見つからず、論文や書籍を読み漁る中で決めました。オープンキャンパスにも参加して、研究計画の内容について先生や現役生にも相談しました。入学後、当時の研究計画から何度も変更を加えて今に至ります。

 今回は、国連大学の「アフリカでのグローバル人材育成プログラム」(以下、GLTP)による支援の下で調査しました。GLTPの存在を知れたのは、OSIPPの教授や同期の情報共有のお陰です。応募にあたり、指導教員や副指導教員に、調査内容や応募用紙の書き方について相談しました。

 事前準備の事も念頭に、現地調査中の私の行動について2点触れます。

まず、効率的な情報収集についてです。途上国は情報インフラが不足しがちで、整理されていない紙媒体、未完成のExcelデータ、担当者の脳内にしかない情報などをかき集める力や、それらを説得力のある情報として構築する力が必要と感じました。

 そのためにも、例えば難民コミュニティ内でリーダーシップをとっている人物や、長期間勤めている難民局の職員など、キーマンと仲良くなる必要がありました。彼らは全体像を把握しており、的確なアドバイス、人材の紹介をできるからです。私は幸いにも、難民定住地にいるNGO職員のお陰で、効率的に彼らとの距離を縮める事ができました。

 また、現地では仮説設定と現地調査の繰り返しでした。質的調査の方法論、難民研究の理論や先行研究、私が軸足を置く国際政治分野の関連書籍、洗練された思想や文章を持つ古典などを何度も読み返しました。その意味で電子書籍や電子データが役立ちました。

 現地にて肌で感じた事として、難民の多くが市民権を必要としていました。数十年も難民定住地に隔離され、移動、就労、居住などの自由が制限されているからです。また、教育の機会を必要としていました。よい仕事につけず、貧困状態から脱却できないからです。

 現状の国際的な政治体制や支援体制では、彼らの諸権利を持つ権利や要望の全てに応える事は困難です。しかし、彼らの経験や感情を私の直感に取り入れながら、それらを政策決定プロセスに反映したい。そんな事を思える現地調査でした。

 

 田中 翔(OSIPP博士前期課程2年)