著書・論文

10月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の先月の研究業績をご紹介します。

・松野明久先生

・室岡健志先生

・中嶋啓雄先生

 

 

松野明久

『A Narrow Bridge(一本の細い橋)美術でひもとくオランダと日本の交流史』
ヤン・デ・ホント、メンノ・フィツキ著/松野明久、菅原由美 翻訳、大阪大学出版会、2020年3月発行

概要:オランダ商船が日本に漂着した1600年から第二次世界大戦後までの4世紀に及ぶ両国関係を、アムステルダム国立美術館などが所蔵する美術工芸品や歴史的資料を通じて解説した一般書の翻訳である。大阪大学適塾記念センターの事業として翻訳した。適塾出身の福澤諭吉が同行した文久遣欧使節(1862年)のオランダ訪問、平戸商館長と日本人の妻との間に生まれた女性のバタビアでの波乱の生涯、泰平の世となり失業した侍たちの南洋での傭兵化、日本占領下のインドネシアで抑留されたオランダ人捕虜の記憶など読みどころは多い。もちろん出島や江戸参府(商館長の将軍拝謁)にまつわるエピソードも楽しい。Shared historyという考え方に基づいた複眼的歴史記述の方法も新しい。美術本レベルの高度な印刷技術を用い、美しく仕上がっている。
プロモーション動画:http://www.osaka-up.or.jp/books/ISBN978-4-87259-701-1.html

 

 

室岡健志
行動経済学 人の心理を組み入れた理論 連載第7回 不確実性下の選択(2)プロスペクト理論
『経済セミナー』No.716、2020年10・11月号(9月発行)

概要:連載第7回目の今回は、不確実性下の選択に関する行動経済学の代表的な理論として、プロスペクト理論を紹介する。まずは、前回解説した期待効用理論と対比させる形で、Kahneman and Tversky (1979, Econometrica)にて提唱されたプロスペクト理論を説明する。次にプロスペクト理論の性質について個別に解説し、また前回紹介したアレーのパラドックスがプロスペクト理論の性質によりどのように説明可能かを検討する。

 

 

中嶋啓雄

Hiroo Nakajima (2020), “James Monroe: a republican champion” The Historian, Volume 82, Number 2, pp. 229-230, DOI: 10.1080/00182370.2020.1778948 (published online August 10)(招待)

概要:Brook Poston, James Monroe: A Republican Champion (Gainesville, FL: University Press of Florida, 2019)の書評。同書はアメリカ合衆国の建国者(Founders)の一人であり、第5代大統領も務めたにもかかわらず、従来、あまり注目されてこなかったジェイムズ・モンローの伝記的研究である。対外政策に焦点を当てたその優れた内容を紹介し、二三の問題点を指摘しつつ、同書刊行の意義を論じた。