OSIPP博士論文執筆のプロセス
2021.5.11
OSIPP博士後期課程の3年間における、博士論文執筆のプロセスについて紹介します。前期課程と比べて専攻する領域や個人によって研究活動がバラバラなので博士後期課程の流れについてイメージしにくい人が多いのではないでしょうか。そこで、今回は一例として政治学を専攻する博士後期課程のプロセスを紹介します。この記事が博士後期課程を志す方の一助になると幸いです。
博士後期課程の3年間のゴールとなるのは、研究の集大成である博士論文の提出です。博士論文は分野にも依りますが、専門書1冊程度の分量だけでなく、研究上の新規性やオリジナリティも求められるので、いきなり提出するのは非常に難しいです。そこでいくつかのステップを踏んでいくことになる人が多いと思います。まずは自身の研究計画書を見て博士論文の大まかなテーマや位置づけを把握します。その上でそれを細かいテーマに分割して投稿論文としての公表を繰り返して、修正をしていくのが一般的です。それでは次に、博士論文の一部となる投稿論文とはどういうものなのかを説明します。
投稿論文は博士論文の章に相当するもので、それ自体で独立した問題提起と結論を持つものでなければなりません。例えば、1940年代から50年代冷戦期初期の日米関係をテーマとする博士論文であれば、1945年の9月の終戦直後~1947年頃の冷戦構造の顕在化の時期は一つのまとまりとして、独立した問題提起と結論を持ちながら、より大きなテーマを論じるための基盤にもなります。その後は1つ1つの論文を執筆するために、データや史料を集めて仮説を作り上げていく作業になります。こうした論文の投稿を繰り返すことで博士論文提出までの道のりが明確になってくると思います。
しかし、実際はそうスムーズにステップを踏める訳ではなく、どのデータが適切か判断が難しかったり、仮説の立証が十分ではないと批判されたり、投稿した論文がリジェクトされたりすることもあります。そういった時は、是非先輩や同輩、指導教官に相談してみてください。論文投稿の困難さは誰もが通る道なので、それぞれの経験に基づいた有益なアドバイスをもらえると思います。OSIPPのコミュニティーはとても友好的な雰囲気です。博士後期課程においてもそれは同様で、安心して先生や友人に相談できるのが強みであると思います。
以上紹介した例はあくまで一例で、投稿論文よりもいきなり博士論文をまとめる領域もあるかも知れません。しかし、博士後期課程の最終的な目標は博士論文の提出にあることは変わらないので、その点を意識しながら個々の活動に専念されている人が多い印象です。どういった専門誌に投稿するのがよいのか、学会活動や助成金や公募への応募はどうするのかなど、まだまだページの都合で紹介できていないことも多いですが、今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。これから後期課程に入学される皆さんがよい学生生活を過ごせることを願っています。
OSIPP博士後期課程3年 内輪雅史(執筆:2021年2月)