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5月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の5月の研究業績をご紹介します。

・木戸衛一 先生

・中嶋啓雄 先生

・大久保邦彦 先生 

 

 

木戸衛一(論文)

「「制服を着た市民」の終焉?-国外派兵常態化のドイツ」
『富坂キリスト教センター(基督教イースト・エイジャ・ミッション) 紀要』第12号

概要:第二次世界大戦で絶滅戦争を展開したドイツの軍隊は、戦後、防衛監察官の導入など、民主的な再建を余儀なくされた。冷戦終結後、NATO域外への派兵が容認され、1999年ユーゴ空爆で連邦軍は、第二次大戦後初めて実戦に参加した。2002年のアフガン派兵以降国外派兵が常態化する中、「制服を着た市民」という連邦軍のありようにも変化が生じている。2011年の徴兵制中断も、連邦軍が介入軍としての性格を強めていることの反映である。

 

中嶋啓雄(論文)

「高木八尺と戦後の知的交流の再生――アメリカ研究との関連を中心に」『アメリカ太平洋研究』
(東京大学大学院総合文化研究科 アメリカ太平洋地域研究センター)22巻(2022年3月)、29ー36頁

概要:東京大学大学院総合文化研究科アメリカ太平洋地域研究センターの公開シンポジウム「高木八尺 その学問と社会活動――CPAS高木八尺デジタルアーカイブ公開に寄せて」での報告に基づく。アメリカ太平洋地域研究センター図書室所蔵の高木八尺文庫に収められている諸文書の一部が、デジタルアーカイブとして公開されるのを機に、そうした一次史料から1920年代、専門的なアメリカ研究に従事するようになった日本のアメリカ研究の祖・高木八尺(やさか)が、研究対象とする国と自国が戦火を交えるという困難に直面しながらも、戦後、アメリカ研究の再生と戦前来の知的交流に再び尽力したことをあらためて窺い知ることができると指摘した。

 

大久保邦彦(判例評釈)

「不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金への民法405条の(類推)適用の可否」
『判例秘書ジャーナル』(電子ジャーナル)文献番号HJ100136(1-12頁)

概要:最判令和4年1月18日の判例評釈である。民法405条は1年分以上の利息支払延滞と催告を要件として債権者に延滞利息の元本組入権を認める。不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金に同条が(類推)適用されるかという問いについては、裁判実務では否定説が当然視されていたが、2009年頃から肯定説に立つ下級審判決が現れはじめ、近時は裁判例が対立していた。本判決は、不法行為に基づく損害賠償債務は債務者にとって履行すべき債務の額が定かでないこと、不法行為に基づく損害賠償債務については催告をまたずに不法行為時から遅延損害金が発生することを理由として、否定説を支持した。それに対して、本稿は、同条の(類推)適用を肯定するならば、契約関係にない被害者と加害者との間で催告と組入れが繰り返され、訴訟等においてその有無や時期を確定することが必要になることを指摘し、その実施可能性に懸念があることを主な理由として、合目的性(効率性)の観点から否定説を支持する。

※論文に関しては、特に記載のないものは査読のない論文です。