【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(馬皓星さん)
2022.8.8
【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(馬皓星さん)
今回は、OSIPP博士後期課程に在籍中で日本学術振興会特別研究員でもある、中国出身の馬皓星さんにインタビューを行いました。研究者を志した理由や研究内容、将来の展望などを語ってくださいました。
研究者を志した理由や経緯を教えて下さい
幼い頃から、外国語で交渉して問題解決をすることに憧れがあり、外交官になることを夢見ていました。そこで、中国の大学では政治学と外国語を学び、卒業後にアメリカの大学へ留学したところ、社会問題の定量的研究(対象を数字や数量として分析する研究)に興味を持ち、研究を行うことで社会問題の解決に貢献したいと考えるようになりました。さらに、研究者は「自分が興味のある分野を追求できる」という自由さや、数学を用いて社会現象をモデル化する経済理論研究の面白さを知り、研究者としてのキャリアに挑戦しようと考えました。
現在の問題意識や研究内容、研究成果について教えて下さい
数年前、リチャード・セイラー氏(2017年にノーベル経済学賞を受賞)とキャス・サンスティン氏の共著『Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness(邦題:実践 行動経済学)』という一般読者向けの本を読んで、心理的な要素を取り入れて経済活動を分析する行動経済学という学問に興味を持ちました。
現在は「ナイーブな消費者」(必ずしも完全合理的に行動しない消費者)が存在する市場での企業の行動を理論的に分析しています。具体例として、インターネット上の特定のサイトで偽の口コミに惑わされる消費者や、マッチングアプリで偽の情報を信じてしまう消費者が、それらの偽情報に惑わされて企業の価値を過大評価している場合、企業はその消費者に提示する価格を高く設定してより多くの利潤を得ることができます。その結果、消費者は損をすることになります。
そこで、修士論文に続く最近の研究では、企業が偽情報を利用して最大の利潤を得ようとする戦略を経済モデル化して、ナイーブな消費者が存在する場合の結果に関する理論的研究を行っています。最終的には、オンライン市場における偽情報を制限するための法律や規制が作成される際に、企業行動をどのように規制するか、消費者をどのように保護するかについて、政策立案者に政策的示唆を与えることを目指しています。
研究者としての将来の展望について教えて下さい
社会科学分野における良い研究とは、社会問題の解決や社会福祉の向上に役立つものでなければならないと私は考えています。私の研究者としての長期的な目標は、そのような“価値ある研究”を行うことです。短期的な目標としては、論文を国際雑誌に投稿することと、学会での発表を通して、執筆中の論文をより良いものにすることです。
研究職を目指す後輩にメッセージをお願いします
研究者を目指す過程では多くの失敗を経験しますが、自分なりの小さな成功体験を少しずつ積み重ねていくことで自信を失わないことが大事です。OSIPPでは、多くの優秀な先生方や仲間たちに出会えますので、彼らから学び、刺激を受け、自分が今できることをやり続けて下さい。
(OSIPP博士前期課程 大谷知弘)