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-ドイツ便り-  OSIPP教授 木戸衛一

-ドイツ便り-

OSIPP教授 木戸衛一


今月ドイツに出張されている木戸先生から「ドイツ便り」をいただきましたので、ご紹介します。

(写真:連邦政府報道情報局の入り口)

 

ドイツでは一昨日までの約2週間、ほぼ全国的にカンカン照りの日が続きました。ライン川の水位が下がって、船の運航に支障が生じれば、ポーランドとの国境のオーダー川では、原因不明で魚が大量に死んでいます。

今日のベルリンは、半袖ではいささか肌寒い、小雨交じりの一日でした。この週末は、首相官邸や各省庁が一般市民に開放される「オープンドア・デー」です。これは1999年、社会民主党と緑の党の「赤緑連合政権」時代に始まった催しですが、ここ2年はコロナ禍で中断されていました。ようやくの再開ですが、以前各省庁を繋いで見学者を運んでいたシャトルバスは、今回はまだ運行には至りませんでした。またウクライナ戦争によるエネルギー危機を受けて、省庁の照明はかなり抑え気味でした。

「オープンドア・デー」の宣伝
(地下鉄ベルナウアー・シュトラーセ駅にて)

「オープンドア・デー」では、施設が開放され、さまざまな情報が提供されるだけでなく、市民と大臣の直接対話が行われます。今日は財務省で、リンドナー財務相(自由民主党)が、ウクライナ戦争を機に巨額の利益を得ているエネルギー・コンツェルンなどになぜ過剰利益税をかけないのかとか、公用車への補助金をなぜ廃止しないのかといった辛口の質問を受けていました。明日は、官邸にショルツ首相(社会民主党)が登場する予定ですが、どのような市民との交流になるでしょうか。いずれにしても、インタビューをする側とされる側が初めから示し合わせているような日本の空疎な記者会見よりははるかに聞きごたえのある対話になると思います。

ドイツの政治の大原則は、透明性・公開性にあります(もちろん、現実にはいろいろ矛盾もありますが)。「オープンドア・デー」に関しては、さまざまな形で告知されました(右記写真)。普段記者会見が行われる連邦政府報道情報局に掲げられた「民主主義が招待する」という看板文句は、なかなか言い得て妙だと思います(冒頭の写真)。たとえば今日の首相官邸では、荷物を預けて敷地に入るまで30分以上もの長蛇の列ができていました。民主主義とは、市民一人ひとりが自分の頭で考え自分の足で行動することなのだということが、この国ではいろいろな場面で確認できます。

 

【2022年8月20日記】