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8月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の8月の研究業績をご紹介します。

・赤井伸郎 先生

・大久保邦彦 先生  

 

 

 

赤井伸郎 coauthored with 沓澤隆司・竹本亨(論文)

「COVID-19の感染状況と被害が地価に与える影響の実証分析」forthcoming in 『財政研究』第18巻(Accepted in July 2022)(査読有)

概要:新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行は,感染を防ぐための都市内におけるソーシャルディスタンスの確保やテレワークの推奨などを促し,この結果,形態や場所も含めた住宅や商業施設,オフィスへの需要が変化することが見込まれ,この変化は,住宅地や商業地の地価にも反映されると思われる。そこで,本論文では,COVID-19の人口当たりの感染者数や死亡者数の違いが,住宅地や商業地に対する選好の変化を通して地価にどのような影響を与えたかについて,地価公示のパネルデータを元に,感染者数等の内生性を踏まえた操作変数を用いた固定効果分析を行った。この結果,①COVID-19の人口当たりの感染者数や死亡者数が増加すれば不動産価格に負の影響を与える,②容積率が高く土地利用が高度化している地点ほどそれらの影響は大きいことが明らかとなった。

大久保邦彦(論文)

「利益衡量論(利益考量論)の再評価」『阪大法学』72巻2号(2022年7月)

概要:裁判官の多くは自らが望ましいと考える結論に到達した後でその結論を正当化する三段論法を考案する傾向にあることを、リアリズム法学は明らかにした。そして、その影響は、加藤一郎の「利益衡量論」、星野英一の「利益考量論」を始めとして日本の民法学にも深く浸透している。しかし、結論に到達する際には、裁判官の勘・人格・信仰・情熱・偏見といった主観的・非合理的な要素だけでなく、客観的妥当性を有する法原理も作用している。本稿では、利益衡量(考量)論が結論を導く際に法原理が作用している事実を確認することによって、利益衡量(考量)論の試みを再評価するとともに、利益衡量(考量)論は、「法原理」ではなく「利益」に着目した結果、法原理に対する考察が疎かになり、その諸相や性質・機能を十分に捉えられなかったこと、そして、法原理の衡量(利益衡量・価値判断)に際し(制定法だけでなく判例を含む)現行法がすでに行った評価を軽視したことにより、抽象論と個別事件における具体的価値判断とをうまく架橋することができなかったことを明らかにする。

※論文に関しては、査読に関する記載のないものは査読のない論文です。