卒業生近況 藤川雅大さん/在ミャンマー日本大使館 勤務
2015.11.2
平成13年3月に修了された藤川雅大さんよりメッセージをいただきましたので、ご紹介いたします。
皆様はじめまして。私は大阪大学法学部を卒業後、1999年にOSIPP博士前期課程に入学しました。学部時代から漠然と国際政治、特に核軍縮に興味を持っていたので、OSIPPではCTBT交渉を国際交渉学的な観点で見直しました。同時に、実際の国際交渉に携わる職業として外務省を志望しており、運よく入省してからアフリカや東京でODAに関わりつつ、生物・化学兵器禁止条約(BWC、CWC)を担当することも出来ました。
核兵器ではありませんが、BWC、CWCも多国間軍縮条約として、定期的な会議や査察措置を伴います。OSIPP時代には、CTBTの交渉記録を読み解きながら、各国の発言の真意や会議の雰囲気に思いを馳せたものですが、実際の交渉現場に自ら立ち会い、自分の発言が政府を代表したものになると、そういう感傷に浸る間もありません。国際交渉というと聞こえは良いですが、どうってことのないように読みとれる文言の一字一句に拘り、深夜まで議論を続けるという泥臭い作業の連続でした。
また、私自身は理系的な専門知識を持ち合わせていないので、お医者さんや生物学者等に助言を求めたこともありました。近年の国際会議はより技術的・専門的な内容になっており、多様なバックグラウンドを持った関係者が交渉に参加しています。そうした中で、特定分野の専門性を深めることは重要ですが、学生時代にはもっと幅広い事項・分野について見識を広めておくべきだったと痛感します。えてして外交官という職業は、扱う事象が変わっても、議論の本質を見抜き、整理する能力が求められているように思えるからです。
そういう意味で、OSIPPには、文系・理系双方で様々な経歴を有する同僚が多くいたので、大変刺激になりました。課題に追われてついつい研究室に閉じこもりがちになるのですが、コーヒーブレイクの合間等に雑多な話題で盛り上がり、ついつい長居したことも良い思い出です。
現在、私は在ミャンマー日本大使館で経済・開発協力に携わっています。大使館勤務は、現地情勢の分析・報告の他に、ミャンマー政府要人との面談や要人往来への対応等、体力勝負な一面もあり、日々新鮮な毎日を送っています。OSIPP在籍時の研究とは異なりますが、我が国の国益を実現するという意味で、当時の志望動機に適っていることは幸せです。
OSIPP在学生・修了生ともにかなり増えたろうと察しますが、皆様のご多幸と、院の益々の発展を心からお祈りします。