セミナー・シンポジウム

薮中三十二特任教授 OPEN教室
「Exploring Japan’s Path in the Divided World」

「Exploring Japan’s Path in the Divided World」

2023年1月23日、元外務省事務次官の薮中三十二OSIPP特任教授による「Exploring Japan’s Path in the Divided World」と題したOPEN教室が開催された。今回のOPEN教室はOSIPP棟2階講義シアターにおいて、英語で実施された。参加者は学内外から学生、教員、一般の方々と幅広く、さらに多様な国籍の方々が集まったことによりグローバルな空間となった。

 

まず中嶋啓雄OSIPP教授による開会挨拶および薮中先生の紹介の後、講義に移った。

薮中先生は、まずウクライナ情勢について述べた。初めにロシアによるウクライナ侵攻に至る背景や歴史について解説した上で、侵攻前における外交的空白を指摘した。 今回の争いが起こった責任はプーチン大統領にあるとしつつも、事前にこの侵攻を防ぐための機会はあったかもしれず、米露間での十分な外交がなされなかったとした。今後の展望は不透明であるが、粘り強く交渉の道を探る必要性について述べた。

次いで、米中対立や中台関係、北朝鮮の核兵器開発など日本を取り巻く安全保障環境について紹介し、安保関連三文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)の公開によって話題となっている防衛費や反撃能力について触れた。そして、日本の進むべき方向性として、日米同盟および日本の防衛力強化の必要性を認めつつも、最近は外交が疎かにされているとし、積極的な外交努力の重要性を強く説いた。

意見を述べている中内先生

薮中先生の講義内容については、長年、日本外交を担った薮中先生ならではの鋭い洞察に基づく分析を存分に味わうことができるものでだった。また、今回のOPEN教室にはヨーロッパ政治を専門に研究している上智大学教授 中内政貴先生(2020年までOSIPPにて薮中先生と同講義を担当)も駆けつけ、奥行ある議論が展開された。なお、講義中は受講者から質問が飛び交っていたため、普段は参加していない一般の方々にとっても、一方通行の「講演会」ではなく、いつもの活発な「講義 」の雰囲気を味わえたのではないだろうか。

 

※薮中先生は10周年を迎える自身の私塾「薮中塾グローバル寺子屋」において日々若者たちと議論を重ねていることを紹介し、若者たちが議論し積極的に発信していく重要性を説き、分断される世界においても活躍できる人材の育成への熱意も語った。

薮中塾グローバル寺子屋 – Speak out with logic! (g-terakoya.org)

(OSIPP博士後期課程 平野歩)