著書・論文

7月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の7月の研究業績をご紹介します。

・石瀬寛和 先生 ・大久保邦彦 先生

・和仁健太郎 先生   ・二杉健斗 先生

 

 

 

石瀬寛和(著書)

「課題と手法の限界の狭間で」
大塚啓二郎・黒崎卓・澤田康幸・園部哲史 編著『次世代の実証経済学』日本評論社(2023年6月)

概要:信頼性革命を中心とした実証経済学における近年の進化を概観するとともに、その進化によってもたらされた研究の発展や課題について考察する。その上で、新しい分析手法を取り入れつつ、実証経済学をさらに稔りある学問にするにはどうしたらよいかについて、幅広く議論する。実証経済学全体に関する概観と政策応用についての章に続き、各論の章では開発、労働、貿易など諸分野における実証分析の進化と利点、問題点、その打開策について議論する。全ての章は各執筆者による本論に続いて、討論者によるコメントと、本論執筆者によるリプライという3本立てで構成される。

 

大久保邦彦(論文)

「「法の内的体系」鳥瞰図」『阪大法学』73巻2号(2023年7月)

概要:本稿は、立法や裁判などの諸決定間の整合性を追求し、法の一貫性を確保するために、「法の内的体系」、特に「私法の内的体系」を描き出すことを目的とするものです。わが国では民法学の泰斗である我妻栄や星野英一がこのテーマに取り組みましたが、「抽象的命題」と「個別事件における具体的価値判断」との架橋に失敗しました。そこで、本稿では、この問題につき蓄積のあるドイツ法圏の学説を参照して、この課題に取り組んでいます。
その結論は以下のとおりです。
「法の内的体系」の頂点には、正義・法的安定性・合目的性という3つの法理念があり、法理念のすぐ下の原理層には、すべての法ルール・事態に作用する基底的法原則がある。そして、これらの法理念・基底的法原則は、不法行為法・契約法・不当利得法といった一定の法領域において、より具体化された法原理として現われることがある(価値のヒエラルヒア)。しかし他方で、法原理は衝突し合うことがあり、その調整が要請される(価値のコンフリクト)。そして、法原理をどのように調整したかは、法制度レベルでは基本思想として、法ルールレベルでは立法趣旨として示される(下図のようなイメージです)。

 

和仁健太郎(論文)

「ロシア・ウクライナ戦争から考える中立法の現在―交戦国への軍事援助の国際法的評価―」
有斐閣Onlineロージャーナル(2023年7月)https://yuhikaku.com/articles/-/12885

概要:X国(例:ロシア)とY国(例:ウクライナ)との間に国際的武力紛争が存在する場合において、Z国(第三国)がY国に軍事援助を与えることは、国際法の観点からどのように評価されるか。この問いは、①武力行使に当たるか、②中立法の観点からどう評価されるか、③Z国がこの国際的武力紛争の当事国になるか、という3つの問いに分割できる。本稿は、これらの問い(3つの相互関係を含む)について検討する。

 

二杉健斗(判例研究)

「国家間申立の許容性―スロヴェニア対クロアチア決定」『人権判例報』6号(2023年)96-101頁(査読有)

概要:欧州人権裁判所(ECtHR)のスロヴェニア対クロアチア決定(2020年11月18日)に関する判例評釈。個人申立手続で非政府組織要件(欧州人権条約34条)を否定されたスロヴェニアの国有リュブリャナ銀行(Ljubljanska Banka)のためにスロヴェニアが行った国家間申立の許容性について、欧州人権条約、裁判所の先例および他の条約等との関連で分析を行った。

 

※論文等に関しては、査読に関する記載のないものは査読のない論文です。