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【院生投稿】辻本篤輝さん(OSIPP博士前期課程)

院生投稿:辻本篤輝さん(OSIPP博士前期課程)


初めまして。今年4月に国際公共政策研究科(OSIPP)に入学した辻本篤輝です。OSIPPに進学した理由と関心のある学問についてお話ししたいと思います。

(写真:愛犬たちと一緒に撮影)

 

 

OSIPPへの進学について

私は、学部生時代は他大学の経済学部に在籍していました。最初は広く浅く勉強していたのですが、学部3年次のときに人々の健康や教育についてデータを使って分析をする実証分析に出会い、その世界にのめり込むようになりました。そして、その分野を勉強する中で、社会科学やデータ分析の知見を活かしてより良い社会の構築に寄与したいという想いを強くしました。しかし、本格的に分析を始めた学部3年次の後期からでは、勉強を深めるにはあまりにも時間が足りず、もう少し継続して学びたいと感じたので、博士前期課程に進学することにしました。
研究科の選択にあたり、以下のことを考えていました。そして、その条件を満たすのがOSIPPでした。

・経済学のみならず幅広い視点から事象を分析できる視座を養えるということ
・特に実証分析を用いた社会学・政治学の世界をのぞけること
・その一方で軸足となる学問である経済学をしっかり学べること
・専門職大学院ではなく、研究指導に重きが置かれていること
・関西(地元)にある大学院であること

そして最大の決め手は、OSIPP教授である松林哲也先生の存在でした。私は公衆衛生や社会疫学に関心があるのですが、経済学部出身ということもあり疫学での統計学の使われ方に少ししっくりしない部分がありました。そんな時に松林先生に関するOSIPPNewsの記事を読み、「公衆衛生学を社会科学的方法に基づいて分析を行う」という内容にとても共感し、OSIPPへの入学を決めました。

実際に入学してみると、OSIPPの教職員の方々が大変親切で、日々学生の様子を気にかけてくれていることにとても驚きました。OSIPPの教員に何かを相談した時には、常に力がわくようなコメントをいただけるので、私にとって常に励みになっています。

 

研究について

私が最も今関心を抱いているのが自殺の問題です。
日本は主要国の中で自殺死亡率が高い国で、15歳から49歳の死因で一番多いのは自殺です。また、近年日本における自殺者数は減少傾向にありましたが、コロナ禍で自殺者数は増加に転じています。私はこのような状況をどうにか打破したいと考えています。

福島県双葉町の復興イベント「双葉まるごと文化祭」に参加した時の様子 https://shibuya-qws.com/project/futabafestival

公衆衛生の分野では自殺について、これまで様々な研究が行われてきました。例えば、阪神淡路大震災などのような大規模な自然災害下では、失業率増加などの結果自殺者が増えてしまいます。しかし、逆に、少なくとも短期的には減る場合もあるのです。¹どうしてでしょうか?その理由の一つではないかと近年注目を浴びているのが「社会的なつながり」を意味するソーシャル・キャピタル(以下SC)です。災害による非常事態下で地域のSCが強くなり、メンタルヘルスの悪化を和らげるということが、そのメカニズムの一つではないかと考えられています。しかし、SCと自殺の関係は分かっていないことも多く、今後も研究の必要があるテーマです。例えば、コロナ禍ではSCは自殺者数に影響したのでしょうか。コロナ禍は大規模な自然災害同様に経済的なショックやメンタルヘルスの悪化をもたらしましたが、その期間やショックの大きさなどは自然災害とは違うことも多いです。自然災害時の研究結果がそのまま当てはまるというものでもありません。コロナ禍における自殺とSCの関係を分析することにより、近い将来におこりうるパンデミックなど長期的なショックによる自殺者の増加を緩和する処方箋の一つを見つけられるかもしれません。
研究を通してエビデンスを蓄積し、将来的には少しでも政策形成の場においてそれらを役立てられるとしたら望外の喜びです。そのためにまずはしっかりと勉強したいと思います。とりあえず目の前の宿題(明日提出)に向き合います..。


¹詳しくはSawada Y, Ueda M, Matsubayashi T. Economic Analysis of Suicide Prevention: Springer; 2017.をご覧ください.

博士前期課程のOSIPPNews編集員メンバー(筆者は右から2番目)と撮影。筆者も現在編集員として活動中。