セミナー・シンポジウム

松浦晃一郎氏 オープン教室
「私の履歴書―若い世代の人たちに伝えたいこと―」

2024年1月31日に、豊中キャンパス文法経講義棟42番教室にて松浦晃一郎氏(第8代ユネスコ(国連教育科学文化機関)事務局長・大阪大学客員教授)による「私の履歴書―若い世代の人たちに伝えたいこと―」と題した特別講義が行われた。本講義はOSIPPの蓮生郁代教授が担当しているOSIPP開講科目「国連政策エキスパート養成講座」及び一般開放のオープン教室として開催され、約70人が参加した。

 

講演の前半は、松浦氏がこれからの日本に求められることや日本の学生に望むことを話した。アメリカ一強の時代は既に終わり、多極化の時代を迎えているという見解を述べた上で、松浦氏は日本が国際的な見識や経験を持つ人材の育成に取り組まなければならないことを強調した。また、学生一人一人が外国に関心を持ち、外国のことを勉強すべきだということや、言語面では特に話す・聞くといった能力を伸ばすことの必要性を説いた。かくいう松浦氏は小さい頃から外国語や外国文化に強い関心があり、親が買い与えてくれた海外の著名人の伝記などをよく読んだと過去を振り返っていた。

講演の後半は質疑応答の時間であった。質問は絶滅の危機にある言語の保護からロシアによるウクライナ侵攻、大阪万博の是非といった時事的なことまで幅広いテーマに及び、松浦氏は自らのエピソードを交えながら私見を述べた。

元ユネスコ事務局長から直接話を聞くというのは貴重な機会であった。外国語の学習を始め、何かを継続的に学ぶことの難しさは誰しもが知っているように思う。学生にとって、本講義は新しいことを始める良い機会になったのではないだろうか。

 

〈松浦晃一郎氏ご経歴〉
山口県出身。東京大学法学部を経て、外務省入省。米国ハヴァフォード大学経済学部卒。外務省経済協力局長、北米局長、外務審議官(先進国サミットのシェルパ兼任)を経て駐仏大使、世界遺産委員会議長、アジア初のユネスコ事務局長(第8代)を務める。在任中は組織改革を断行し、米国の加盟復帰実現や、無形文化遺産保護条約の策定など多くの業績を残している。帰国後、立命館大学学術博士号を取得。現在はアフリカ協会会長、日仏会館名誉理事長、パリ日本文化会館運営審議会共同議長、群馬草津国際音楽協会代表理事、大阪大学客員教授、株式会社パソナグループ顧問等を兼務。『国際人のすすめ』、『私の履歴書-アジアから初のユネスコ事務局長-』などの他、英語および仏語による著書多数。

 

記事執筆のために参加であったが、実際に参加してみるとどのテーマも私にとって興味深いものだった。とりわけロシアによるウクライナ侵攻や大阪万博といった時事的なテーマは日々メディアが報じているところだが、松浦氏によるメディアが触れないような角度からの回答は、非常に勉強になった。

(OSIPP博士前期課程 久保知生)