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【My Favorite】河村倫哉准教授「映画監督フランク・キャプラ」

【My Favorite】
このシリーズでは、OSIPP教員の“推し”をご紹介します。


河村倫哉 准教授「映画監督フランク・キャプラ」
(写真:『IT’S A WONDERFUL LIFE(素晴らしき哉、人生!)』Paramount Movies Official Trailerより)

 

私は普段、政治思想や政治理論の研究をしている。正しいとされている秩序にも必ず負の側面があり、それを隠蔽しようとする権力的なものを批判するという、ひねくれた頭の使い方をしている。そして、学生のプレゼンが理想主義的だと、待ってましたとばかりにつっこみを入れている。そうでいながら、実は私はフランク・キャプラ作品が好きだ。あまり馴染みがないかもしれないが、1930年代から1940年代に活躍したアメリカの映画監督であり、ウィキペディアでもヒューマニズムあふれる作品を作ったと紹介されている。

「スミス都へ行く」のポスター

実は私は中学生の頃から古い映画が好きだった。発端はあまり褒められたものではなく、俺はチャラい商業戦略に乗せられて小泉今日子や薬師丸ひろ子のようなありきたりのアイドルを好きになるお子様ではなく、イングリッド・バーグマンやオードリー・ヘップバーンのような本物のスターが好きな大人なんだよ、というのが理由である。実は世界的に見ればバーグマンやヘップバーンの方が日本のアイドルよりもずっとありきたりであり、昔のハリウッドのゴリゴリの商業戦略に乗せられて彼女たちを好きになっているわけだが、愚かな中学生の私にそんなことは分かるわけもなかった。

それはともかくとして、古い洋画は当時からかなり見まくった。私の中学高校時代は1980年代だが、映画情報誌で場末の映画館のリバイバル上映を見つけては見に行っていた。大学生になるとレンタルビデオ屋さんが普及してきたので借りまくった。キャプラ映画の主なものとしては、或る夜の出来事(1934)、オペラハット (1936)、我が家の楽園 (1938)、スミス都へ行く (1939)、群衆 (1941)、毒薬と令嬢(1944)、素晴らしき哉、人生!(1946)などがある。毒薬と令嬢などはちょっと違うが、多くのキャプラ作品のパターンはほぼ一緒である。

「群衆」のポスター

最初は純朴な青年(大体ゲーリー・クーパーかジェームズ・スチュワート)が何かを頑張っている。ひょんなことでヒロイン(大体ジーン・アーサーかバーバラ・スタンウィック)と知り合って惚れるのだが、現実的な彼女はこんな世間知らずの青年など相手にしない。そこに青年を食い物にする悪い奴が現れる。利用されるだけ利用されて青年は落ち込む。しかし、ヒロインはその姿を見て母性本能をくすぐられ、主人公を一生懸命励ます。そこで一念発起した青年はヒロインと手を取り合って戦い、最後はハッピーエンド。ついでに何だか悪い奴も改心しているようである。

こうして説明していると、何だかアメリカ版の池井戸潤原作ドラマみたいに思えてきた。しかし、クーパーもスチュワートも半沢直樹ほど格好良くはない。倍返しだ!などと大見えを切って自力で解決するようなことはあまりない。彼らが最後に勝つのはアメリカがヒューマンで民主的な国であり、みんなが彼らを応援するから。悪い奴もたくさんいるけど、やっぱりアメリカはいい国だよねというのが、どの映画でもメタメッセージになっている。

あまり好意的な説明になっていないかもしれないが、それでも私はキャプラ作品が好きだ。理由は結局のところ、私の中で仕事と生活がつながっていないからであって、仕事としては常識を疑い、権力を批判しなければならないが、身の回りにそんな小難しい奴がいたら大っ嫌いだからだ。テレビで討論番組など見ていると、そんな斜に構えて文句ばかりつけて何になると、心の中で討論者を憎悪している。自分はやっぱりキャプラみたいな映画を好きな人と友達になりたい。そういう人の方が絶対に信頼がおける。ということで、今も仕事で理屈をこねるのに疲弊すると、キャプラ映画に逃避している。

フランク・キャプラ作品鑑賞中の河村先生(ご家族による撮影)