【同窓会主催】修了生インタビュー(西村慶友さん)
2025.11.27

2020年にOSIPP博士後期課程を修了された西村慶友(にしむら よしとも)さんにインタビューを行いました。西村さんは現在大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro)に勤務され、オンデマンドバスの導入など新しいモビリティ施策の実施に取り組んでいます。インタビューにはOSIPP教員の川窪先生も同席しました。(写真: 西村さん)
1. これまでの経歴、現在の分野や職種に就職しようと思った理由を教えてください
大学卒業後、4年間は競馬新聞の記者を務めました。学生時代から競馬やプロレスが好きだったことがきっかけです。その後、消費者問題専門紙を扱う新聞社の記者などを経て、インターネットの新規事業を展開する会社に転籍しました。そこで地方創生関連の事業に携わり、2013年には日本初のふるさと納税支援事業を立ち上げました。全国120以上の自治体で導入され、地域の新しい財源確保に貢献できたことは大きな経験でした。
管理職となったことをキッカケに、組織づくりや人事評価について考えるようになりました。実務をより深く学術的に裏付けたいと考え、英国国立ウェールズ経営大学院でMBAを取得しました。
さらに、官民共同で関わっていたふるさと納税制度を公共政策の観点から見直すため、OSIPPの博士後期課程に進学しました。赤井伸郎先生や故・山内直人先生の指導の下、地方創生の観点から「ふるさと納税の実証分析」をテーマに博士論文を執筆しました。当時はふるさと納税に関する定量的なデータが十分ではなかったため、自治体にアンケート調査を実施し、さらに寄付者・住民を対象とする調査会社経由のアンケートも行いました。これらのデータを用いた多面的な分析により、博士論文を完成させ、博士号を取得しました。
社会インフラを担う企業で力を試したいとの思いから転職活動を行い、Osaka Metroに入社しました。交通事業は未経験でしたが、新規事業立ち上げの経験が評価され、MaaS(Mobility as a Service)の創成期に参画しました。オンデマンドバスの導入など、市民生活の基盤を支える新しいモビリティ施策に挑戦しています。
また、2025年の大阪・関西万博では「大阪ヘルスケアパビリオン」の出展企画を担当し、没入型シアターで「交通の発達が大阪の未来をどう変えるか」を表現しました。さらに、森之宮に開設した「e METRO MOBILITY TOWN」では、空飛ぶクルマや自動運転バスなど、リアルとバーチャルの両面で“未来の大阪”を体感できる場を実現しました。万博とモビリティタウンで示したのは、Osaka Metroが描く将来像であり、新技術を社会に根付かせる挑戦を続けています。
2. 現在のお仕事についてより詳しく教えてください!
現在は、オンデマンドバスの拡大など新しいモビリティサービスの社会実装に携わっています。交通分野は少子高齢化の影響で市場が縮小することが予想されています。その中で、Osaka Metroは公共交通を守る役割を担っています。既存の路線バスは、利用者が少なくても一定の時間・一定の距離で運行する必要があり、コストがかかる点が課題です。効率的に運用するには、需要があるときに運行し、需要がないときは運行しない設計が望ましいと考えます。タクシーのように柔軟に利用でき、路線バスのように運賃が安い――その発想からオンデマンドバスの立ち上げを行いました。現在、オンデマンドバスは大阪市24区で順次エリアを拡大し、誰もが便利に移動できる「市民の足」として定着しつつあります。
仕事の魅力は、関わったサービスが形となり、人々の生活の利便性が高まる瞬間を直接確認できる点です。一方で、新しい仕組みの導入には、制度や規制、住民理解などの課題を一つずつ乗り越える必要があり、関係者間の調整には大きなエネルギーを要します。それでも、社会に新しい交通が根付いていく過程を経験できることは、この仕事ならではの醍醐味です。
3. OSIPPで学んだことは現在のお仕事にどう生かされていますか?
論文で扱ったふるさと納税の知識自体が直接業務に結び付いているわけではありませんが、論文執筆で身に付けたロジカルな思考は現在の仕事に活きています。公共政策の実務では、自治体や地域との関係構築が不可欠です。
また、研究と実務をつなぐには、理論と現場の両方を行き来する姿勢が重要だと考えています。新聞記者時代から「現場に足を運び、人の声を聞くこと」を徹底し、前職では制度の事業化を経験しました。これらが博士課程での分析や現在のモビリティ施策の企画に繋がっています。
学生時代には研究に集中することも大切ですが、同時に社会の現場に触れ、多様な人の声を聞く経験を意識的に持つことをおすすめします。また、統計や制度分析といった定量的スキルに加え、文章力やプレゼン力などのスキルも磨いておくと、研究成果を社会に発信し実装するうえで強みになると実感しています。
4. お仕事以外の活動についても教えてください。
赤井先生や故・山内先生の紹介でNPO関係者と交流する中で、地域活動の重要性を実感しました。そこで、子供が通う西九条小学校のPTA役員を務める中で、子どもたちの思い出に残る活動として、小学校の校庭で気球を飛ばすイベントを開催しました。これが好評を博し、多方面から声がかかるようになりました。(写真:実際に飛ばした気球)
その後、地域活性化を目的とする「一般社団法人 この花咲くやアート協会」を設立しました。私が代表理事を務める同法人は、大阪市此花区を拠点にアートイベントを開催し、子どもから大人までが参加できるアート体験を通じて地域の活性化に取り組んでいます。
2024年のイベントには6,000人以上、2025年のイベントには8,000人以上が来場し、公園全体が笑顔であふれる一日となりました。アートを通じて「正解のない時代を生きる力」を子どもたちに育みたいと考えており、これはOSIPPで得た「制度や仕組みを社会に活かす視点」を地域に応用した実践例と言えるのではないでしょうか。
(写真:2025年 11月2日に開催された「この花アートピクニック2025秋」のチラシ)
5. OSIPPへの入学に興味がある学生や現在の学生に向けてメッセージをお願いします。
私は40歳でMBA、47歳で博士号を取得しました。決して早い年齢ではありませんが、OSIPPは年齢やキャリアに関係なく、誰でも温かく受け入れてくれる場です。いつでも挑戦できることを覚えていてほしいと思います。
研究に没頭すると視野が狭くなることがあります。そんなときは立ち止まり、振り返り、過去の考えや初心を大切にしてください。その積み重ねが自分の軸になります。OSIPPには多様な背景を持つ仲間が集まり、議論を通じて考えを磨くことができます。研究で得た知識が直接役立たなくても、研究過程で培った力は必ず社会のどこかで役立ちます。恐れず挑戦を続け、自分らしいキャリアを築いてください。
(OSIPP博士前期課程 阿部翔弥)
