学術交流協定在学生

ダブル・ディグリー・プログラム 受講生の声 (@オランダ フローニンゲン)

岩元晴香さん(OSIPP博士前期課程)
-ダブル・ディグリー・プログラム受講生-

2018年9月から9ヶ月間、ダブル・ディグリー・プログラムでフローニンゲン大学(オランダ)に留学した岩元晴香さんの留学体験記を紹介します。

 

 

■留学の決意
私は、大阪大学大学院国際公共政策研究科(以下、OSIPP)に入学したばかりの頃、修士論文のテーマは準備していたものの、何と無く焦りを感じていた。

私が取り上げたいと思っていたテーマは、「日本における外国籍児童の教育統合」についてであった。特に、外国籍児童の日本語習得を促進するために、地域に根付く官民アクター(e.g. 地方自治体、小学校、NPO)は、どのように「協働」 すべきかを研究したいと思い、当研究科に入学した。しかし、私は、OSIPPに入学する以前から、自分が選んだテーマにあまり自信が持てなかった。言い換えると、上記のテーマを選択した理由を、論理的に説明できなかったのである。

オランダ フローニンゲン大学画像

図書館の向かいにあるアカデミー・ビルディングは、「ハリー・ポッターっぽい」と生徒の間で話題

この不安を解消するためには、何から取り掛かれば良いのだろうかと悩みを抱えていたある日、ダブル・ディグリー・プログラムたるものがあるということを知った。これに選出されれば、オランダのフローニンゲン大学というところで学べ、しかも大阪大学とフローニンゲン大学両方から修士号が取得出来てしまうプログラムであることがわかった。
これを知った時に、私は、「チャンスだ」と思った。オランダは、ヨーロッパの中でも特に移民に寛容な国であると言われている。そこに行けば、自分が今後研究を進めて行く上で「知っておくべき何か」がきっとあるはずだ。私は、藁にもすがる思いで校内面接を受け、幸運なことに、留学への切符を手に入れることが出来た。

■オランダでの生活

「毎日、4・5本は論文を読まなければ間に合わないよ。」
「授業について行くのでさえも、大変だった。」

現地での授業の様子は、過去にフローニンゲン大学へ留学した経験のある先輩方から沢山聞いていた。そして、彼らの言及は、全て正しかった。毎授業課されるリーディングの量は、確かに多く、私も取り敢えず読み終えることに必死だった。しかし、それだけでは、授業中のディスカッションにはついていけない。リーディングの中で説明されている理論・規範・言説などが、国際関係学・歴史学においてはどのように位置付けられ・どのような影響力を持っているのかについて自分なりの見解を持っておかなければ、全く授業に貢献できないのだ。

一学期の間は、近所の猫が親友だった。二学期は、猫とは疎遠になった代わりに、沢山の大切な友だちが出来た(友人とのショット別添)

私は、渡蘭したばかりの頃、中々授業について行けず、自身の少ない知識量を呪う場面が何度もあった。授業中のディスカッションで、手を挙げられないことはしばしばあったが、手を挙げたとしても、的を射た発言が一切出来なかった。

しかし、最初は、どんなにちんぷんかんぷんな授業でも、慣れてくるものだ。次第に、論文を読むコツが分かり、授業内で求められている発言が一体何なのかも、だんだん分かるようになってきた。そのおかげで、ディスカッションで手を挙げる機会が格段に多くなった。

さらに、半年も経つと、私が留学前に感じていた「不安」の原因が明確に分かるようになった。私は、修士論文で取り上げるテーマの正当性について悩んでいたが、それは、分野における研究動向を理解していないことに起因するのだと気が付いた。つまり、今までの私は、論文を読んでも、それを他の論文と関連付けることなく、個別のものとして扱ってしまっていたのだ。しかし、本来、私がすべきだったのは、バラバラになっている知識を蜘蛛の巣のように整理し、研究の潮流を掴むことだったのだ。そうすることで、自然と自分が選択したテーマが正当か、そうでないかが見えてくる。

■結びにかえて
このように、確かに留学中苦労したこともあったのは事実だが、結局なんとかなるものだ。環境が変われば、適応する時間が少々必要になる。これは、至極当然のことであり、何ら不思議なことではない。なので、もし現在、留学しようか悩んでいる人が居たら、躊躇せず、思い切って挑戦して欲しいと思う。

フローニンゲン大学への留学を通して、「世界に通用するような研究者としての基礎」を学べたことは、私にとってかけがえのない財産となった。
私は、心の底から、「留学して良かった」と思っている。