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国際シンポジウム「グローバリゼーションの時代の人種主義と不寛容」を開催

­ 2月23日、OSIPPは「グローバリゼーションの時代の人種主義と不寛容(Racism and Intolerance in the Age of Globalisation)」と題する国際シンポジウムを開催しました。パネリストとしてオランダ、フランス、ドイツ、スウェーデンの各国および欧州評議会(Council of Europe)から第一線で活躍する研究者および実務家をお招きし、差別問題の最近の動向や政策などについての報告と議論を行っていただきました。

 

 第1セッションでは、オランダ・グローニンゲン大学のヤニー・デ・ヨング教授に「オランダは人種主義社会になったのか?―統合政策、問題点、議論」と題して、またフランス国立科学研究センター研究部門長のキャサリン・デ・ウェンデン教授には「共に生きる―市民であることの挑戦」と題して、多くの移民が居住する両国の現状と政策に関する報告をいただきました。デ・ヨング教授は報告の皮切りとして、クリスマスに関連したオランダの伝統行事に関して巻き起こった論争を紹介されました。これはサンタクロースの付添人「ブラック・ピート」が顔を黒く塗った姿で登場する表現に対して、人種主義にあたるのではないかとの批判がなされたもので、長年にわたって実施してきた伝統への思わぬ指摘にとまどうオランダ社会の様子に、参加者は人種問題を考える難しさを実感しました。デ・ウェンデン教授は、移民人口の増大とフランスの試行錯誤の歴史を紹介され、結果として自由・平等・博愛に代表 される共和国の理念が大きな困難に直面していることを説明されました。

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 第2セッションでは、ドイツ・ビーレフェルト大学のヴィルヘルム・ハイトメイヤー教授に「ドイツとヨーロッパにおける対集団憎悪(group-focused enmity)」と題して、またスウェーデン平等オンブズマンのポール・ラッパライネン法律・政策アドバイザーには「平等の確立―持続可能なプロセスの開発」と題して、対集団憎悪に関する統計的研究の成果や、差別に取り組むオンブズマン制度について報告いただきました。ハイトメイヤー教授は、社会的・経済的地位によって移民や性的マイノリティなどを嫌悪する傾向に違いがあるとの研究結果を紹介され、参加者から大きな反応がありました。ラッパライネン氏は、実は人種主義は多くの人が心の中に持っている傾向であり、真の課題は日常の場面の中でそれが発露することを抑えることにあるとして、政策によって差別行為に大きなコストが伴うようにすべきだと主張されました。

 第3セッションでは、欧州評議会のステファノス・スタヴロス反人種主義・反不寛容欧州委員会(ECRI)事務局長に「人種主義と不寛容に対する欧州評議会のアプローチ」と題して、ECRIの取り組みについて紹介いただきました。同セッション後半の総括討議では、ラッパライネン氏から、日常的な差別の禁止は刑罰によるよりも民事による手段が有効であり、差別にはコストが伴うことを明確にすることが重要であるとの見解が示され、この点をめぐって、刑罰と民事的な解決策をどのように使い分けるべきなのかが活発に議論されました。また、仲裁による差別の解決方法や、日本のヘイト・スピーチ規制やジェンダー状況などにも関心が寄せられ、約30人の参加者を得た8時間に及ぶシンポジウムは、活発な議論のうちに幕を閉じました。

 

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