山本芳幸氏(元国連プロジェクトサービス機関の平和安全保障センター所長、及び国連ブロックチェーン顧問・OSIPP招へい教授)特別講義
2021.12.16
山本芳幸氏特別講義
2021年11月19日、元国連プロジェクトサービス機関の平和安全保障センター所長、及び国連ブロックチェーン顧問で現在OSIPP招へい教授の山本芳幸氏による特別講義が国連政策研究センターとの共催で行われた。
この講義は、ニューヨーク在住の山本氏とオンラインでつなぐウェビナー形式で実施された。山本氏は、本学外国語学部の前身である大阪外国語大学と大阪大学法学部の卒業生である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のほか国際移住機関(IOM)、国連開発計画(UNDP)、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)などでの26年間の国連勤務を経て2019年に退官した。
講演では今年大きく動きのあったアフガニスタン情勢の背景について、グレートゲーム(19世紀から20世紀にかけて起こった、主としてアフガニスタンの覇権をめぐる英露抗争)にまでさかのぼり、アフガニスタンの先史からの流れを踏まえて解説した。 さらに、国連や米国の思惑とパシュトゥン人であるタリバン側の立場とのねじれ、それによって現地で起きていたことについて、山本氏ご自身の現地での経験をもとに紹介した。講演後半では、国連の組織体系やその内部での改革、「人間の安全保障」という考え方について触れながら、アフガニスタンを例に、国際社会からの支援の在り方の理想やジレンマについて述べた。その内容を踏まえて、日本は海を隔ててはいるものの、地理的には中国やロシア、米国といった大国に囲まれており、同様の地理的条件を持つアフガニスタンの事例は日本にも適用できるような学びが多くあることを伝えた。周囲の国々と、それらの思惑に振り回されることなく、良い関係を築くためのヒントがあると話した。講演後は質疑応答の時間も設けられ、山本氏は時間の許す限り参加者からの質問に答えていた。
今年ニュースで見ることが多かったアフガニスタン情勢だが、筆者はその歴史や背景に関してはこの講演を受講するまで詳しく理解できていなかった。カブールの現状や国連の状況に精通している山本氏のお話は真に迫るものがあり、かつ分かりやすく、他では聞くことのできない貴重なお話であった。また、国際支援の在り方や国連組織内部に関しての話題にも触れていたので、国際舞台での活躍を目指す学生にとって勉強になることが多かったのではなかろうか。
(OSIPP博士前期課程 中瀬悠)